魂の中でリンクしていると力が入る

――王子を演じた際、「作り手側の感情の発露ができるキャラクターってそう居ないので、ちょっと魂乗っちゃいました」と話されていましたが、「かじりつくようにやるしかないんだよ」のシーンなど、関連するシーンの「声の立て方」が絶妙だと感じました。

 自分の中でも、魂の中でリンクしているセリフだったり、「これはそうだよね」というところはやっぱり力が入ってしまいますね。そこで意識的に表現を変えようという打算もあったし、王子の出演シーンの中での感情の起伏を見せたい、という思惑もありました。

 ぶっちゃけ、王子の出番は限られていますからね(笑)。これだけ魅力的でストーリーのある役だから、本当は原作にある分量やりたかったという想いはあります。吉野耕平監督が「中村倫也にぴったりだ」と振ってくれて、しかもすごく魅力的なキャラクターだし、そのぶん気合も入っていたので。気合を入れちゃいけない作品もたまにありますが、今回は気合を感じさせない程度には入れていかなきゃという作品でした。

――「気合を入れちゃいけない作品」というのは、個人としての想いが出過ぎるとバランスが崩れるという意味でしょうか。

 そうですね。今回もそれは念頭に置きつつ演じていました。上手くいっていたらいいなとは思いますが、自分ではなかなかわからない(笑)。

 思い返すと、例えばイベントのシーンなど、現場で相談して、台本からちょっとセリフを足させてもらいました。『ハケンアニメ!』では原作をショートカットして、かつプラスアルファしていますが、王子のシーンではちょっと接続する文章が少ないと感じたんです。

 観ている人と王子がリンクするものにしたいというか、アニメファンじゃなくても言っていることが理解できる文章じゃないとあそこのシーンはカリスマになれないと1回やってみて感じました。自分も完成版を観て確認しましたが、短い文字数で5か所くらい足していましたね。

 一般的……という言い方をするとまた王子に怒られちゃいますが(笑)、詳しくない人が観るとちょっと足りないよと思ったところは吉野さんとやり取りして言葉を加えさせてもらいました。結果、それで混ざりが良くなったと感じます。そばのつなぎを増やしたみたいな、コシもあるし風味もちゃんとあるけど、つるつるっとしたのどごしのあるものになりました(笑)。

2022.05.20(金)
文=SYO
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=Emiy
スタイリスト=小林 新(UM)