外見の作り込みは、衣装に近い

――『孤狼の血 LEVEL2』の日岡しかり、作品に挑む上で髪型やスタイルといった外見を自分で作り込むことは、松坂さんにとって重要なピースなのではないかと感じました。

 そうですね。今回の文のシルエットに関しては、植物っぽい感じになればいいなと自分の中では思っていました。自分の空気感だけではなく、映像で撮ったときに見た目も含めてそうなればいいと考えたときに、じゃあ身体作りが必要だ、という思考の流れがあります。

 『孤狼の血 LEVEL2』であれば、前作からの時間の流れは髪をバッサリ切ることで示せればと思っていました。「空白期間にこういう心境の変化があったんだな」ということを観る方に想起させる、“奥行”を作るためのエッセンスになればという想いでそうしました。そういった意味ではある種、外見の作り込みに関しては衣装と近い考え方を持っています。

――なるほど! 「植物」というキーワード、非常にしっくりきました。原作の中に登場する「トネリコ」ともリンクしますね。

 はい。僕も原作を読ませていただき、そのイメージがずっと頭の中にあったので自然とその方向に意識が向いていきました。

――植物のイメージに付随するかもしれませんが、「目」と「反応」も印象的でした。文は暗く沈んだ目をしていて、他者と対話する際にパッとレスポンスするわけではなく独特の間やトーンがありますよね。李監督含め、どのように正解を導き出していったのでしょう。

 リハーサルを繰り返す、というところがあると思います。事前にリハーサルを重ねたうえで、撮影当日に李さんとキャストだけで現場でリハーサル、ディスカッションをして方向性を固めたうえで、撮影部や照明部のスタッフさんが入り、そこで改めて段取りが始まり、本番へ向かっていくんです。日々1シーンずつコトコト煮込んでいくような、すごく面白い時間の使い方でしたね。

 だから、自分から何かするというよりも(広瀬)すずちゃんの芝居や、李さんから「こういう言い方をしてみようか」というヒントをもらって、それらを何度も混ぜて、こして、出汁を取っていくような感じでした。

 ただ、すずちゃんとは「ここでこう思ってる」「ここはこうしたい」というようなディスカッションというよりも、コミュニケーションに近い関係性でした。言葉を交わして詰めていくというより、芝居を通じて深めていくような、ちょっと更紗と文の距離感に近いものでした。

――表現の場として、非常に潤沢ですね。

 そうですね。ただ、撮影スケジュール自体に決して余裕があったわけではなく、助監督の方やスケジュールを切ってくださるスタッフさん、皆さんてんやわんやだったと思います。

 ですがその中でも李さんや撮影監督のホンさんが一つひとつのシーンに対してとても真摯に向き合ってくれるので、僕たちキャストが「急がなきゃいけないのかな」という気分になることがなくて。「1日1シーンしか撮れなかったとしたらもうそれでいい」と思わせてくれるような空気感を作ってくれました。チーム全体で、支え合ったから成し遂げられたことだと思います。

2022.05.06(金)
文=SYO
撮影=三宅史郎
ヘアメイク=AZUMA@ M Rep By Mondo Artist
スタイリスト=丸山晃