チャリティランナーとして走る意義は?
![北澤豪さんは1968年東京都出身。読売クラブ、東京ヴェルディで活躍し、日本代表としても多数の試合に出場経験を持つ。現在、公益財団法人日本サッカー協会参与およびフットサル・ビーチサッカー委員長、一般社団法人日本障がい者サッカー連盟会長という重責を担っている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/9/1280wm/img_49f805932087f3a64b660703b84aa24581792.jpg)
北澤 ちなみに、走り始めて感じたポジティブな変化って、何かありました?
能美 マラソンを始めた頃は、体力的な衰えを感じたり、体重が減りにくかったり、身体の変化を感じ始めた時期でもありました。そういう意味では、健康を管理しながら、自分自身の体調と向き合うことができた意味は大きかった気がします。走った分以上に食べてしまうこともあったんですけれど(笑)。
北澤 それも含めてポジティブな変化と言えるかもしれないですよね。大切なのは自分自身と向き合うことで、フルマラソンを走るなら絶対に必要なことだから。
能美 北澤さんも、健康管理に対する意識は強いですか?
北澤 年齢を重ねるほどコンディションを維持するのが難しいから、マラソンを走れる身体を作ろうとすることだけで、十分にポジティブな効果があると思います。考え方によっては、病院に行くより大切なことかも。
能美 わかります。私、走っていた頃はぜんぜん風邪を引かなかったんですよ。それから、歩くことが苦じゃなくなりました。5キロくらいなら平気で歩けるので、出かける時はスニーカーを履くことが増えましたね。
北澤 最近はもう、フルマラソンには挑戦していないんですか?
能美 2017年の東京マラソンが最後です。ただ、ランナーズ・ハイというか、アドレナリンが出ているあの感覚が大好きで、機会があったらまた挑戦したいと思っています。
![2017年の東京マラソンに参加した能美さん。スタート地点の東京都庁前にて。©TOKYO MARATHON FOUNDATION](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/0/1280wm/img_7076945b45791cd6074309030d899829201667.jpg)
北澤 正直、僕は自分自身の“外側”に走る理由がないとフルマラソンは走れない。
能美 それが“チャリティ”なんですね。
北澤 そう。2013年9月に「マクドナルド・スマイルランナー」に任命していただいて、それ以来ずっと、チャリティランナーとして東京マラソンに参加してきました。
能美 どういう活動をされているんですか?
北澤 マクドナルドがサポートする「ドナルド・マクドナルド・ハウス」という施設があって、これは、長期の治療と療養を必要として入院生活を強いられている子供たちとその家族が一日1,000円で滞在できる施設なんです。ここの運営は、基本的には募金や寄付、ボランティアによって成り立っている。それを一人でも多くの人に知ってもらうために、「マクドナルド・スマイルランナー」として東京の街を走ってきました。
能美 私はチャリティランナーとしてエントリーした経験はないんですけれど、最近は、どの大会でも必ずと言っていいほど“チャリティ枠”が設けられるようになりましたよね。
![北澤さんのフィニッシュの瞬間。丸の内・行幸通りにて。タイムは4時間20分35秒を記録した。©TOKYO MARATHON FOUNDATION](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/6/1280wm/img_56660f586c60358c5474e710a9dd5b16277573.jpg)
北澤 スポーツ界におけるチャリティ意識は、少しずつ高まってきた気がします。東京マラソンは10万円を寄付することでエントリーできるから、「出場権を10万円で買う」という見方をする人も中にはいて賛否両論ある。ただ、僕は、チャリティの入り口として決して「ナシ」ではないと思っているんですよ。
能美 実際にチャリティランナーとして走ってみて、そこで初めて気づくこともあるということですよね。
北澤 そう。10万円を寄付して、一般ランナーとは違うアスリートビブス(ナンバーカード)をつけて、走って、フィニッシュして。そこまでやって気づくことは必ずあるし、僕自身がそれを実感してきたからこそ、まずはそういう“走り方”があることを知ってもらうことが大切だと思っているんです。僕自身の役割はそこにあるから、この年齢になっても頑張って走っている。ひとりでも多くの人に、チャリティランナーの存在を知ってもらえたらいいなと思いますね。
2022.04.25(月)
文=細江克弥
写真=釜谷洋史、宮田祐杜