ここ数年、リスニングスタイルがダウンロードやストリーミングへと変化している一方で、レコードの人気が世界的に高まってきている。

 アナログ独特のあたたかいふくよかな音の魅力はもちろん、ターンテーブルにレコードを乗せて、針を置くという所作もワクワク感を高めてくれる。

 ただ、レコード専門店に足を踏み入れるのは少しハードルが高いもの。だけど、最近はレコードだけなく、こだわりのコーヒーを淹れてくれたり、スパイスの効いたカレーを提供してくれたりする、楽しみがプラスオンなレコードショップが都内に増えてきているのだ。

 レコード初心者でも安心して足を運べる”レコードショップ兼〇〇”という、注目の5軒を紹介していこう。


“カレーとお酒”を堪能できる「BLOW UP」

 渋谷駅から徒歩5分ほど。さまざまな店が軒を連ねる道を抜け、「渋谷マークシティ」の裏道にあたる坂道を上っていくとこぢんまりとしたレコードショップがある。

 数々の名店でバイヤーを務めたDJの北村圭士郎 a.k.a. CHINTAMさんが、2018年にオープンさせた「BLOW UP」は、ランチはカレー、夜はバーとしても営業している。

 どこか隠れ家のような雰囲気も漂う同店は、食事をしながらお酒も飲めて、レコードも選べるというコンセプトの元、オープンさせたのだとか。

「意外とそういうコンセプトのお店が無くて、レコードを提供しながらみんなでワイワイできたら良いなと思ったのがきっかけでした。お店をオープンさせてからしばらくは夕方から夜だけの営業だったんですが、お昼の時間がもったいないな、と思いだして、自分でやれることはないかなと思ってスタートさせたのがカレーの提供です」

 同店の定番メニューであるスパイシーポークカレーは、ゴロっとした豚肉の食感と14種のスパイスがピリッと効いており、副菜にはトマトや季節の野菜、酸味のある紫キャベツなどがついてくる。受注制で冷凍でも販売しているため、同店こだわりの一品を自宅で楽しめるのも嬉しい。

「元々、カレーが好きだったことから始めたんですが、真剣に取り組んだらやれるものだなと思いましたね。嬉しいことにお客さんもちょこちょこと来てくれるようになって」

 そう語るように近隣に勤めるサラリーマンからレコード目当てのお客さんまでもCHINTAMさんのカレーのリピーターとなって、完売してしまう日もあるほどの人気ぶりだ。

 レコードショップが土台にある「BLOW UP」だが、コンセプト通りカレー以外にも食事を提供している。

「夜の時間帯には、大衆居酒屋にあるような煮込みを出したり、冬場はおでんを出したり、『レコードショップなのになんでこんなのが出てくるの!?』って驚かれることも多いです(笑)。ちょっとしたシャレのひとつでもあるんですが、もっとできるんことがあるんじゃないのかなと、本気でいろんなものを作っています。カレーもそうですが、まだまだ模索中なんですけどね」

2021.10.19(火)
文=渡里友子
写真=今井知佑