ふたりの出会いと映画『その日、カレーライスができるまで』

 リリー・フランキーと齊藤 工。フィールドを問わずに活躍する表現者同士が、またもや意欲的な作品を創り上げた。

 監督:齊藤 工、出演:リリー・フランキーの映画『blank13』(18)から始まったふたりの“共闘”は、ダブル主演したドラマ「ペンション・恋は桃色」(20)を経て、最新作『その日、カレーライスができるまで』(監督:清水康彦、2021年9月3日より全国順次公開中)へ――。本作では、齊藤が企画・プロデュースを担当し、リリーがひとり芝居に挑戦する。

 土砂降りの中、アパートの一室でカレーを煮込み始める男(リリー・フランキー)。彼の切ない過去が、ラジオ番組に投稿するメールや、電話で交わされる会話という形で紐解かれていく。

 リリーの味わい深い演技と、『ペンション・恋は桃色』でリリー&齊藤と組んだ清水康彦の遊び心あふれる演出、『半沢直樹』の脚本も手掛けた金沢知樹が構築した物語が混ざり合い、52分の中で風合いがじんわりと変化していく作品だ。

 今回は、リリーと齊藤の対談をセッティング。出会いから本作に至るまでを、ざっくばらんに語ってもらった。笑いの絶えない密なやり取りを、じっくり堪能いただきたい。


リリーさんがかぎ分ける“何か”に絶大な信頼を置いています

――まずは、おふたりの出会いを教えてください。

齊藤 『blank13』(2017年制作・2018年公開。齊藤の長編初監督作)ですね。僕はリリーさんとは面識がなく、ただただファンでしかなかったので「いきなりオファーしていいものなのか?」とためらいがあったのですが、ご相談することはタダだと思い、わずかなツテである小林有衣子プロデューサーを辿ってご連絡させていただきました。

 小林さんは、今回もプロデューサーを務めていただいていますね。そして、なぜか快諾していただいた……というのが出会いです。

リリー (笑)。

――リリーさんは様々なフィールドで活躍されていますが、齊藤さんはどういうところに惹かれ、リリーさんのファンになったのでしょう?

齊藤 存在ですね。リリーさんはよく「香ばしい」という表現をされるのですが、リリーさんがかぎ分ける“何か”に絶大な信頼を置いています。

 メジャー/マイナーを問わずに映画やドラマに出演されつつ、そういった限りではない基軸で泳いでいらっしゃって、僕はその“動線”のファンです。もちろん局地的に、大好きな作品はたくさんあります。

リリー これ、恥ずかしいね……(笑)。

――(笑)。ぜひ、リリーさんからも齊藤さんに対する印象を伺えればと思います。

リリー 存在は知っていて、強烈に認識したのはドラマ「クロヒョウ 龍が如く新章」(10)のときですね。

齊藤 おお……(感嘆)。

リリー あれを観たときに、めっちゃ色っぽい顔をしている人だなと思って。そのあと映画も作るようになって、こういう人なんだと意識して、そのあとに共演作『SCOOP!』(16)で勝手に会った気になっていました。

齊藤 現場ではお会いできなかったですよね。

リリー そうそう。でも大根仁監督がしょっちゅう「映画が本当に好きなんですよ。自分の出演シーン以外も観に来るんです」と(齊藤)工くんの話をしていたから、自分も会ったものだと錯覚していました。

 この映画での工くんの役どころは、よく受けたなというようなもので(笑)。スクープされるシーンで、パンイチになってる(笑)。

齊藤 それで言うと、いま放送中のドラマ「漂着者」のファーストシーンは全裸です。ついにパンイチですらなくなりました(笑)。

リリー パンゼロだ(笑)。

2021.09.19(日)
文=SYO
撮影=三宅史郎