佐藤緋美がインタビューで語る
自身のこと、幼少期の思い出のこと
「新宿って、全然来ないんですよ(笑)」と、はにかみながら霧雨の中にたたずむ佐藤緋美は、それでも都会の雑踏も、緑も、よく似合った。
日本を代表する俳優の父と歌手の母を持つ佐藤さん。凛々しい表情で、しんとした雰囲気を纏う彼だが、何かを言い笑うたびに、朗らかな人間性が顔をのぞかせる。
アーティスト、俳優として芸能活動を始めて4年目。最新出演映画『ムーンライト・シャドウ』(吉本ばなな原作)では、愛する恋人と兄を同時に亡くした17歳の少年・柊を演じた。
心の喪失を受け止め、一歩踏み出す柊という難役だが、佐藤さん自身をそのまま投影したかのような佇まいで、観客の心に強く残る存在感を示した。
現在21歳。佐藤さんは一体どんな人物なのか? 本人に、直接いろいろと聞いてみた。
自ら監督に提案した「おかっぱ」
――佐藤さんが『ムーンライト・シャドウ』で演じた柊は、オーディションで射止めたそうですね。
はい、そうです。原作を読んで、柊をイメージして合わせていったわけではなく、そのままの自分でオーディションに挑んだのですが、監督の中の柊のイメージと僕が合致したので受かったんだと思います。
実際、撮影に入っても監督は細かく演技に指導をせず「自由にやっていいよ」というスタイルだったので、伸び伸びとやらせてもらいました。
――柊は、食事を通してその人の内面を理解したり、亡くなった恋人のセーラー服を着るシーンが印象的です。佐藤さんは、柊のことをどういう人物と捉えていましたか?
すごく雰囲気がある人、というか、普通ではない、変わっているような印象でした。けど、そこは結構自分と重なるところもあって、結構そのままの自分を投影してもいるんです。柊は男らしいというよりは、中性的で、まだ少年だし、“真ん中”というイメージでした。
――おかっぱ頭も特徴ですね。
衣装合わせのときに、もみあげとおかっぱ頭を自分から提案しました。何となくそのイメージが湧いていたので、それを監督に伝えたら「あ、いいんじゃない!」と。それで採用してもらいました。
――柊は、作品において非常に重要な人物です。そうした役を任されたことについては、どう感じましたか?
本当に、すごく重要な役だったので、僕自身もやる気をすごく出していきました。だからといって、「柊のための役作り」をするわけではなく、そのままの(自分の)雰囲気を生かしてやってみようと思って。
「演技してるな」というよりも、「そういう人なんだな」と観てもらえたらいいなと思ったので、僕としては「そのままの佐藤緋美」という感じでやっていました。
2021.09.18(土)
文=赤山恭子
写真=山元茂樹
ヘアメイク=勇見勝彦(THYMON Inc.)