大きな羽根とスパンコールの華やかさの洪水はまさに祭り

「宝塚といえば、大きな羽根を背負ったスターが大階段を降りてくるフィナーレをイメージする人も多いですよね。インパクトもゴージャス感も抜群の大きな羽根とか、スパンコールの衣装とか、そこにあるのは“お祭り感”なんです。祭りが嫌いな人なんて、日本……いや世界中探してもいないと思うんです。

 ほかにも、ショーのなかに組み込まれたラテンの場面を観ると、なぜか血が熱く沸き立ち心が躍りますし、時折挟み込まれるトンチキな場面(笑)も、圧倒的な絵力で、愛おしく微笑ましく見えてくる。しかもそれを、80人余りのタカラジェンヌが歌い踊るんですよ。必ず“目が足りない”と思うはずです」

 しかもその“お祭り”に、観ている側も拍手で参加できるような文化もまた楽しい。

「劇場にいると、客席側の拍手の一体感もまた面白いんですよね。ファンの熱量がすごい日は、拍手の圧も一段と。ちょっとみんな落ち着こう、って日もあるくらいです(笑)」

 宝塚の演目は、ハッピーエンドのこともあれば、悲恋ものもあったりと様様。それでもほとんどの公演では、最後にショーがあり、どんな悲劇の後でも、キラキラを摂取して劇場を後にできるようになっている。

「トップスターを筆頭に、将来のスター候補がひしめきあっていて、端の端まで全員が“自分を見て”とばかりに噓みたいに発光しています。幕が開いた瞬間から、そこはもう別世界。理詰めではなく、心のトキメキの赴くまま“考えるな、感じろ! ”の世界なんです」

 そんな宝塚の舞台ならではのキラキラを浴びていると、生きる希望が湧いてくるから不思議。

「乾いた心への浸透率があまりに高い。“観るスポーツドリンク”が宝塚。仕事や育児疲れにも効くはずです」

2021.09.23(木)
Text=Lisa Mochizuki
Illustrations=est em

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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