秀逸な擬音が楽しいTwitterの食レポ漫画

 そもそも、人々はナガノさんの世界にどこから“入る”のか? それはやはり、Twitterで爆発的な人気を誇る「食レポ」ではないだろうか。

 ナガノさんの化身である「自分ツッコミくま」が、スターバックスの新メニューやいま流行りのマリトッツォに挑戦してみたり、綿密な準備を重ねてラーメン二郎に繰り出してみたり、ちょっと足を延ばして名古屋の山本屋総本家で味噌煮込みうどんに舌鼓を打ったり、“美味しいものを食べる幸せ”を漫画スタイルで表現。

 可愛らしい絵柄、ホッとする言葉選び、思わず「それな!」と言いたくなる秀逸な擬音(きゅうりを食べるときの「カボリ」など)等々、1枚の中に魅力が凝縮され、読んでいるとほっこりさせられる。

 それだけでなく、「日常のあるある」を見事に表現している点も、共感性が高い。

 「夜中にラーメンが食べたくなる現象」「二度寝する幸せ」「部屋を暗くしてお風呂に入ると癒される」「眠れないからケータイを観ていたら朝になっていた」等々、日常で遭遇する小さな出来事をユーモラスに描いてくれるため、Twitterで見かけるたびに「いいね」や「リツイート」を押したくなってしまう(個人的には、ナガノさんが、漫画『僕のヒーローアカデミア』のファンであるところも嬉しい限りだ)。

 ナガノさんの初イラストエッセイ集『ねこくま、めしくま』に代表されるような猫との日々もクスクスと笑わされ、ナガノさんの目線のユニークさ(それでいて、私たちが過ごす生活と地続きにある点がポイント)には驚かされるばかり。

 つまり、「わかる!」と思える親近感と、「こう来るか!」なアプローチ(言葉選び、絵の表現、日常の切り取り方)のハイブリッドなのだ。生活の中から生まれてきた作家でありながら、独自性が担保されているため、埋没することがない。

 その大きな要素といえるのが、やはり自分ツッコミくまに代表されるキャラクターたちだろう。ルックスも抜群にキュートなのだが、注目したいのはその「変貌ぶり」にある。ナガノさんの描くキャラクターたちは、表情の豊かさが絶妙なのだ。

2021.08.23(月)
文=SYO