今でこそ笑い話ですが、大事な試合をナプキンに邪魔されてるような気がしました。一生したくない経験です。

――ピルや月経カップなどもありますが、それらはアスリートの選択肢には入らないですか。元サッカー日本代表の澤穂希さんは現役時代からピルを飲んでいたと公言されていますよね。

下山田 私は母から「ピルは避妊のために飲むものだ」とか「副作用があるから大変らしい」といった話を聞いてきたせいで、簡単に手を出してはいけないもの、という印象を持っていたんです。これは他のアスリートからもよく聞きますね。

 それに、経済的に厳しい環境の人が多い女子サッカー界の場合、生理痛を緩和するために毎月何千円もお金をかける、という感覚は乏しいように思います。トップ中のトップレベルの選手であれば、ピルを薦めてくれたり、正しい知識を与えてくれるような方が若い頃から身近にいるのかもしれませんが。

――では基本的に、指導者などから生理についてアドバイスはもらえないのでしょうか。

下山田 私はなかったですね。ただ、これは指導者だけでなく選手自身の意識も関係あると思います。パフォーマンスを左右する大事なことでありながら積極的に介入してこなかったのは、みんなの頭の中で「生理=話すことはタブーなもの」と決めつけ、解決しようとしてこなかったからでは、と。

 

――下山田さんと内山さんは吸収型ボクサーパンツでそのタブーを破ったわけですが、変われたきっかけはありますか。

下山田 ドイツのチームに所属していた時、チームメイトが普通に「生理痛なんで今日練習休みます」と言っているのにびっくりして。組織ファーストでなく「自分ファースト」でいいんだとはじめて気づいた瞬間でした。

 それまで日本では、どんなに生理用品に不快感を覚えても何も変えようとしなかったり、生理痛だったら自分が我慢をして、冷や汗をかきながら練習していたわけです。その時の自分はすごくつらかったはずなのに、それをあたり前だと思ってきたんですよね。

2021.05.04(火)
文=小泉 なつみ