マスクは今は並ばずとも買える

 購入システムは日々進化し続けており、現在ではコンビニの端末に保険証を差し込み、必要なマスクの種類と電話番号を入力するだけで予約ができるようになった。

 この操作には1分もかからない。正直、ネット予約は認証プロセスが少々面倒で挫折したクチなので、これは本当に画期的だと感じる。

 さらに、台北市内の一部施設では、実験的にマスク自販機も登場している。ここまでくると、小一時間、薬局に並んだのが遠い昔のことのように感じられる。

 ネットやコンビニの予約購入システムが登場する前は、台湾のマスクの管理販売といえば、在庫検索アプリの存在がクローズアップされ、特に日本で絶賛されていたように思う。

 このアプリを始め、販売系統を指揮しているのは、デジタル政策を担当する39歳の若きIT大臣・唐鳳(オードリー・タン)氏。天才エンジニアとしてのキャリアも注目されている人物だ。

 日本でも話題となったマスク販売アプリは、政府が販売薬局と在庫のデータを公開し、民間の有志エンジニアが作成したアプリがデータを運用。さまざまなタイプが登場してきた。

 こちらも日ごと改良が加えられ、便利なことには違いないが、在庫表示がされていても、店舗に行くと売り切れていたり、事前配布の整理券がなければ購入できないなどの短所があり、役立ち半分、がっかり半分……というのが素直な使用感。

 それゆえ、実際には取り扱い枚数が多い薬局とその場所、販売開始時間などをチェックするためのツールといった印象で、最も役に立ったのは、ママ友のLINEグループに飛び交う「大通りの薬局に、まだ在庫あった!」などという口コミ情報だった。

 今後も健康保険特約薬局での販売は続くが、ネット&コンビニ予約に分散したお陰で、今は並ばずとも買える場合がほとんど。そのため、終了するアプリも出てきている。

 このように制度が変わっていくなか、枚数も増量していき、大人用の場合、7日ごとに1人2枚→3枚→14日ごとに9枚となり、価格もコンビニ販売時は1枚8元(約28円)だったのが、6元(約22円)になり、今では5元(約18円)で落ち着いている(配給制と紹介されたニュースでは、無料と誤解する読者がいたようだが、安価ながら有料である)。

2020.05.15(金)
文・撮影=堀 由美子