2週間で9枚。マスクの販売枚数は妥当?
一瞬の改悪があったものの、日ごと利便性を高めている管理販売だが、枚数については、未解決の部分がある。
というのも、週に5日出勤するのが平均的な働き方だとすると、2週で9枚では毎日取り替えることができない。
皆が「もう、ひと声!」と残念に思ったのと同時に、他国への大規模な寄付を発表したため「国民は薬局に並んで苦労して購入しているのに、外国には無料で配布か」「寄付する余裕があるなら、2週で10枚に!」という声が野党や市民から上がった。
この指摘に関して、中央流行疫情指揮中心(中央感染症センター)の指揮官・陳 時中部長(厚労大臣に相当)は、「1枚の増量も大変なこと。世界的にマスク不足なのだから耐えてほしい」と説き、さらには国民的家電である“電鍋”での殺菌消毒によるマスク再利用法を実演。使い慣れない様子や「温かいし、いいにおい」というコメントが“萌える”と話題になり、枚数問題はいったんの幕引きとなった。
2週で9枚の増量と同時期に発表された他国への寄付については、台湾の防疫対策が世界的に注目されるなか、“今こそ、その時”とのギリギリの判断なのだろうが、支援国が増えるたびに、私の周囲でも「やはり時期尚早。2週で10枚にしてほしい」という声は、くすぶり続けていた。
しかし、ただ不満を言っていても始まらない。1週間で3枚しか手に入らなかった頃から、人々は枚数不足に対処してきていた。口に触れる部分にガーゼを挟むことで使い回すほか、布で作った筒状のカバーにサージカルマスクを入れて着用し、カバーを取り替える……などの方法で工夫し、少ない枚数でしのいでいた。
アイデア商品である布製のカバーは早くから流通し、今では不織布製のカバーやインナーシートも薬局で手軽に買えるようになっている。
マスクでの国際貢献は、正式な国交のない日本に対しても行われ、先日、200万枚の医療用マスクが空輸された。このニュースに対する日本人の感謝のコメントを読み進めるうち、2週間で10枚に……などという贅沢を言っていた自分を心から恥じた。
有事の際、自分に出来ることがあるならと、迷わず手を差し伸べる台湾。その温かな国民性がうかがい知れるエピソードは枚挙にいとまがない。マスクをめぐる心温まるニュースも続いている。
例えば、4月8日(水)の定例会見時、週末も休まず登壇する陳時中指揮官に対し、小学生の子どもが労いと感謝の気持ちを綴った手紙とともに、節約して集めた不揃いのマスクを送ってきたとの報告。
4月27日(月)には、マスクの購入権を寄贈できるシステムを発表。これは、スマホのアプリ上で「人道支援」の申し込みをすれば、過去の未購入分のマスクを寄付に回せるというもので、わずか1日で12万人が応じ、105万枚の寄付が集まった。5月4日(月)の午前の集計では、これまでに約46万人が賛同し、寄付の総数は370万枚超になったという。
世界的な需要の急増で、一時は貨幣にもなりうると囁かれたマスク。外交カードに利用している国もあるなか、台湾では、ひとつのコミュニケーションツールになりつつある。
2020.05.15(金)
文・撮影=堀 由美子