新型コロナウイルスの封じ込めに成功し、評価を高めている台湾。なぜ台湾はうまくいったのか? その秘訣を現地在住日本人ライターが3回にわけて、徹底検証!


 日本のニュースでも、台湾のマスクの実名制管理販売については、頻繁に報道されているので、ご存じの方も多いかと思うが、簡単に説明すると……2020年1月20日(月)あたりから薬局やコンビニからマスクが消え始めたが、時を同じくして政府が医療用マスクの輸出を禁止したほか、「徴収令」を発令し、すべてのマスク工場の在庫を買い上げ、増産体制を促進したことに始まる。

 さらにマスク製造の国家チームを結成し、政府による生産工場も増設。初期投資だけでも9,000万台湾元(約3億2,000万円)で、一般用マスク30本、外科手術用マスク2本の生産ラインを作り、猛烈な勢いで製造枚数を増やし、今では日産1,700万枚が可能になっているようだ。今後も生産ラインをさらに増やし、日産1,900万枚超を目指しているという。

 この増産体制を指揮したのは、経済部長(経済産業大臣に相当)の沈榮津氏。産業界とのコネクションを活かし、関係各所からの協力を得て、国家チームを結成。現場では早朝から深夜まで指揮を執り、通常なら半年を要する規模の製造ラインを1カ月弱で完成させるなど、マスクの安定供給のために尽力した。この人の存在なくして、迅速かつ十分な供給は実現しなかったといわれるキーマンである。

 そうして確保されたマスクの管理販売は、コンビニと大手ドラッグストアチェーンでの政府備蓄分の不定期販売からスタートし、2月6日(木)には健康保険証提示による健康保険特約薬局での販売へと移行。

 それから約1カ月後の3月12日(木)には、薬局販売と同時進行でネットでの予約・コンビニ受け取りが可能に。ほどなく大手スーパーでも受け取れるように改変。この変更によって、日中に並べない層の不満が解消された。

 ただ、薬局側も早朝から販売するところもあれば、夕方からというケースもあり、利便性の向上については、薬局側の精一杯の努力がなされていたことを付け加えておきたい。

 健康保険特約薬局での販売は、並ぶほうもそれなりに大変だったが、数時間で200人分以上のマスク販売を1日800〜1100元の補助のみで行う薬剤師さんへの負担は相当なもので、4月2日(木)からの4連休中に休業した薬局のシャッターには「私たちはこの2カ月、毎日マスクを販売し続け、疲れ果てました。4連休は休みます。マスクは他の薬局でも買えます」と書かれた貼り紙があった。本当に頭が下がる思いだ。

 コロナ禍となって以来、衛生福利部が制作する「防疫大作戦」という啓蒙のためのコマーシャルが始まり、その時々のフェーズに応じた心がけが紹介されるのだが、管理販売が始まった頃、その手順を説明するなかで「マスクを受け取る際は、微笑みと共に“ありがとう”を」というフレーズがあった。

 もちろん私も受け取る際は、気持ちをこめて「麻煩您、謝謝!(お手数をおかけしました、ありがとう)」と伝えていたが、薬剤師さんたちの尽力には、いくら感謝してもしきれない。

2020.05.15(金)
文・撮影=堀 由美子