「さすがにもう無理だろ」と思っても登っていく

 工藤さんは、まったく初心者の状態からボルダリングの練習をスタートしたという。

「最初は意外とサクサクいけたんですけど、“ここから先が難しい”というレベルが上がるあたりから、どんどん登れなくなってきて……。必死に練習していました。

 けど、撮っていない間も、みんなで勝手に課題を作って登ったりして、単純に楽しんでもいたんです」

「だから、“すごくつらかった、しんどかった”という思い出は、そんなにないかもしれません。

 やっていくうちに、登り切ることへのこだわりが小寺さんのようにわかってきましたし、登れたときの達成感があまりにも気持ちいいので、癖になるなって感じました」

 そんな工藤さんの頑張りを一番傍で見ていた伊藤さんは、クライミングの上達ぶりや気合いの入り方に圧倒されたと話す。

「工藤さんも、クライミング部のキャストのみんなも、現場ですごく頑張っていて。映画を観ると、ひょいひょい登っているように見えるじゃないですか?

 僕もちょっとだけやったんですけど、全然、そんな簡単にいけるものじゃなかったです。しかも、監督がカットをかけないのもあるから、さらに大変そうなんですよ(笑)!」

「そうそう」、「本当はもっと倍くらい撮ってるよね!」とふたりが盛り上がったのは、青春ドラマの名手・古厩智之監督のカットをかけない演出ぶり。

 伊藤さんは、「監督が、工藤さんをずっと登らせていたんです! “さすがにもう無理だろ……”と思ってもいかせて、工藤さんも応えて登っていくから、半端ない気合いだなと思っていました」と、主演女優のふんばりで、現場の士気も上がっていたと伝える。

 かくいう伊藤さんも、卓球部員としてめきめきと実力をつけていく近藤を演じるため、卓球の練習を重ねる毎日を送った。

「クランクイン前から練習はやっていました。勝手なイメージで、卓球は動きがコンパクトだから、息が切れるほどでもないのかな……と思っていたんですけど、力を抜ける瞬間がない分、集中力が必要で、すごくハードでした。

 部長役のかたが卓球経験者なこともあって、すごく厳しく、しごかれまくったんですよ(笑)。最後は酸素を吸いたくなりました!」

 身振り手振りを交えて語る伊藤さんは、最後に「ちくしょう、みたいな反骨精神が出てきたから、おかげでどんどん(上達)できたのもありました」と笑顔で、充実感がにじむコメントを残した。

 汗びっしょりになりながらも、腕を振り続ける伊藤さんを見ていた工藤さんは、「一生懸命球を打ち返している姿、普通に“すご……!”って思いました。あまりにもカットがかからないから、だんだん心配にもなってきましたし(笑)」

 と、伊藤さんの気合いに同じく鼓舞されたと振り返っていた。

2020.06.27(土)
文=赤山恭子
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=市川良子(吉野事務所)、島徹郎(juice)
スタイリング=鈴江英夫(H)、釘宮一彰