ポルトガル風情を楽しむスモール・ホテル
コタイ地区の巨大リゾートエリアを通り過ぎ、コロアン島のうっそうとした山の中を進んでいくと、やがて小さな一軒のホテルにたどり着く。竹湾ビーチを見下ろす「ポウサダ・デ・コロアン」は、個人の邸宅を改装した、客室数28の小さなホテル。スモール・ラグジュアリーというよりは、ポルトガルの田舎の家に招かれたような素朴な雰囲気で、カジノをしないマカオツーリストにとっては、とびきりのリゾートでもある。
アットホームな雰囲気で迎えられるレセプションでチェックインを済ませ、美しいアズレージョ(絵タイル)に導かれるようにして、客室へ。けっして広くはないゲストルームは、アンティーク家具を配しただけのシンプルな内装。周辺には、カジノもレストランもバーもないが、山とビーチを眺めてゆったりとした気持ちになれるこの場所に、豪華な設備など必要ない。バルコニーで、微発泡のポルトガル白ワイン「ヴィーニョ・ヴェルデ」を飲みながら、読書をしたりうたた寝をするのは、このうえない至福の時間なのだから。
マカオには、ほかにコロニアルスタイルのホテルが2つ。1つは、半島部のモンハの丘に建つ、「ポウサダ・デ・モンハ」。噴水のあるパティオや、壁を彩るアズレージョが、古き良きポルトガルを薫らせる小さなホテルだ。客室にしつらえた小物も、ポルトガル風の素焼きで可愛らしい。ここは、一般にも開放している教育実習用のホテルで、プロに交じって数人の学生が実習生として働いている。とはいっても、設備やホスピタリティーに不満を感じることはないだろう。ときおり見かける、必死に学ぶ実習生たちの姿に、思わず心が和んでしまうことも。中心地からはやや離れているが、カジノの喧騒もなく静かに過ごせるし、実はこの近辺はおいしいレストランがひしめく、ローカルなグルメエリアでもある。
コロニアルホテルの中で、もっともラグジュアリーなホテルが、5つ星の「ポウサダ・デ・サンチアゴ」。17世紀にポルトガル軍が築いた要塞を改装した建物で、12室の客室はすべてスイート、厳格な審査をクリアしたホテルとレストランのみが加盟を認められるフランスの「ルレ・エ・シャトー」のメンバー・ホテルでもある。
「ポウサダ・デ・サンチアゴ」の入り口にあるのは、この場所がかつて砦であったことを物語る大砲。石造りの頑強な壁で囲まれたエントランスをくぐると、レセプションに続く洞窟のような階段があって、とたんに大航海時代へと誘われてしまう。マホガニーの家具やアンティークの調度品を配した客室も、この歴史的建物と共に、時の流れを遡らせている。建物は古いものを利用しているが、もちろん、設備はすべて最新のものにリノベーションされていて、ジャグジー付きのバスタブやエルメスのアメニティーも完備。中世に絢爛たる栄華を誇ったマカオの夢に思いを馳せながら、非日常を過ごすことができるだろう。
2012.12.13(木)