ルクソール神殿に残る
新婚夫婦の像にほっこり
もうひとつの「ルクソール神殿」は薄暮の頃に訪れた。
こちらはカルナック神殿のアメン大神殿副殿にあたり、修復中の約2キロのスフィンクス参道でかつては結ばれていたという。
ライトアップされた第1塔門の両脇にはラムセス2世の巨像が構え、その前に高さ25メートルのオベリスクが1本、立っている。対となるもう1本のオベリスクはパリのコンコルド広場にあるそうだ。
第1塔門を抜け、ラムセス2世の中庭を過ぎ、第2塔門を越えたところに、ツタンカーメンの坐像がある。
ガイドさんによると、ツタンカーメンと妻のアンケセナーメンとの新婚旅行時の姿だそう。像の背後へ回ると、奥さんの手が旦那さんの背中に添えられているのが微笑ましい。
開花式パピルス柱が14本続く大列柱廊を通り抜けると、思わず足が止まった。
巨大な未開花式パピルス柱に囲まれた大広間、アメンホテプ3世の中庭の上に月がぽかりと浮かんでいた。その時、月と神殿だけが視界に広がり、周囲の観光客のざわめきが遠のくような錯覚が。
かつて、カエサルとクレオパトラの世紀のカップルはナイル川の船旅の際、テーベの神殿に訪れたという。松明が揺れる神殿で、二人して夜空を見上げたのでは? と、想像が膨らむ。
ルクソール神殿には古代エジプトの信仰以外にも、歴史の中で他宗教や文化が混ざった形跡が残されている。
ラムセス2世の中庭には、13世紀に建造されたイスラム教のモスクがある。
この建物が建造された時、ルクソール神殿は砂に埋まっていたために、神殿の上とは知らずに建てられたのだ。だから当時の1階入口は遥か頭上にある、不思議な造りになっている。
また、アメンホテプ3世の中庭の奥には、エジプトにおけるキリスト教である“コプト教”を示す刻印や、フレスコ画や円形ドーム、コリント様式の柱など、4~6世紀のローマ時代の名残も。古代エジプト終焉以降の歴史が、神殿内に見て取れるのも興味深い。
【取材協力】
エジプト政府観光局
人生観、変えてみる?
偉大なるエジプト!
2018.11.22(木)
文・撮影=古関千恵子
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