冬本番、鍋料理の季節がやってきました。鍋料理は自宅でも作ることができるだけに、外食時は専門店ならではの味を楽しみたいもの。食通に愛される「水炊き」「ちゃんこ」「うずら鍋」「あんこう鍋」の名店をご紹介します!
●四季の味 ふじ芳(東京・浅草橋)
下町の気取らぬ和食店で
女将さんが鍋を用意
「四季の味 ふじ芳」は、新潟の料亭で修業した藤田芳男さんが、同郷の女将ヨシノさんと共に、37年前に開業した和食店。名物の「うずら鍋」は、ご主人がかつて修業先の料亭で出していた「うずらの吸物」にヒントを得て生まれたものです。
JR浅草橋駅西口から徒歩1分の線路沿いの道に面した扉を引くと、1階はおばんざいの大皿がずらりと並ぶカウンター席。アットホームな雰囲気のせいか、カウンター席はひとりでもくつろぎやすく、“ひとり飲み”“ひとり鍋”を楽しむ人も少なくないとか。
1階から急な階段を上がると、2階はお座敷席となっています。3人以上で「うずら鍋コース」(4,200円~)を楽しむなら、こちらのお座敷がよいでしょう。壁には「藤村のにごり酒」「寒中梅」「初花」など、おすすめの日本酒を書いた紙が貼られており、お酒も進みそうな雰囲気です。
日本酒と合わせて楽しみたいのは、なんといっても「いかわた塩辛」です。鮮度抜群のいかわたの濃厚な旨みと柚子の香りが調和した塩辛は、洗練の味わい。器の下に隠れているお刺身を絡めていただけば、お酒がするする入ってしまいます。「うずら鍋コース」(4,200円)は盛りだくさんの6品構成ですが、この塩辛は別腹です!
コースのうずら鍋の前に登場するのは、季節の食材を使った「お通し」「おばんざい盛り」「お刺身盛り合わせ(4点)」「柳かれい一夜干し焼き」「えびしんじょう揚げ」。新鮮な旬のお魚の美味しさを満喫したら、いよいよ評判のお鍋の出番となります。
「うずら鍋」で最初にお鍋に入れるのは、うずらとヒナドリの合い挽き肉。女将さんいわく、「うずら肉は最初に入れても硬くならないので、ウチはお肉から入れるんです。つくね状にまとめると火の通りが悪くなるため、ちぎるようにお箸でつまんで、お鍋にふわっと広がるように入れるんですよ」とのこと。
大皿にたっぷり盛られた合い挽き肉には包丁でマス目が入れられていますが、これはお箸で取りやすくするため。お肉が全部お鍋に入ったら、次に野菜などの具材を入れて弱火にし、アクを取って完成です。お鍋は女将さんが作ってくれますから、おだしの香りにうっとりしながら、でき上がるのを静かに待ちましょう。
口の中でほろりと崩れるお肉は、うずらの骨のコリッとした食感のアクセントがあり、薄味のおだしとの相性も抜群。ミンチはうずらだけだとパサつくため、ヒナドリも混ぜて練ることで食感を調えているそうです。
うずらの骨や身の旨みがおだしに染み、そのおだしが他の具材に染みわたる好循環こそ、お鍋の醍醐味。おだしの味付けには醤油もみりんも使われていないので、たっぷり堪能しても決して食べ疲れることがありません。
お鍋の最後には、澄んだスープでおじやをどうぞ。三つ葉と柚子の香りが漂うおじやは、心和むやさしい味わい。澄んだおだしを飲み干せば、帰路の寒さも気にならないほど温まります。
四季の味 ふじ芳
所在地 東京都台東区浅草橋4-1-2(2018年5月14日より墨田区緑1-15-9へ移転)
電話番号 03-3866-6229(電話予約受付 月~土曜 11:00~16:00、2018年5月14日より03-3631-0408に変更)
営業時間 17:00~23:00
定休日 日曜・祝日、年末年始、お盆
http://shikinoaji-fujiyoshi.jp/
※カード利用不可
●「うずら鍋セット」(3~4人前 4,320円・税込)はお取り寄せも可
ふじ芳 ヤフー店
https://store.shopping.yahoo.co.jp/shikinoaji-fujiyoshi/
2018.01.09(火)
文=小松めぐみ
撮影=釜谷洋史