Magnificent View #1204
マラス塩田(ペルー)

(C)Robert Harding Images / Masterfile / amanaimages

 インカ文明といえば世界遺産のマチュピチュが有名だが、そのほど近くにある山間の村には、インカ時代よりさらに歴史の古い塩田がある。

 当時から絶え間なく天然の塩水が湧き出ているのは、標高約3300メートルにあるマラス村。湧き出たばかりの塩水は、谷の急斜面に張りつくように広がる棚田に引き込まれ、天日干しされて塩となる。

 塩田に溜めた塩水が蒸発する乾季には、表面に塩の結晶が現われ、一面は真っ白に。塩を収穫するのも運ぶのもすべて手作業と、製法もインカ時代とほぼ変わらない。

 アンデスの太陽と風と人の手が作り上げる塩は、ミネラルが豊富で味はまろやか。歴代のインカ皇帝にも献上されていたことから、「インカの白金」と呼ばれ珍重されていた。はるばる山を越え、買い求める商人もいたという。もしかすると、インカ帝国が繁栄したのは、この塩のおかげでもあるのかもしれない。

Column

今日の絶景

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2017.01.16(月)
文=芹澤和美