【BL作家は自分の萌えに忠実たれ。】
ひとりのクリエイターが多彩な設定で多数の作品を描いたとしても、結局真のテーマは大抵1つか2つくらいに集約される、問いかけはいつも同じと感じることがあります。たとえば作家Aの主題は「人生の意味」で、作家Bは「家族」、作家Cは「愛」とか。手を変え品を変えして描き続ければいつか真理に到達するかもしれない……それは淡い灯火のような希望です。きっとそれを指して作家性というのでしょう。
ではBL作家の作家性とはなんでしょうか? それは「萌え」だと思います。自分の萌えに正直な作品からBL入門しませんか?
仕事と恋はままならない!?
女王系男子×仕立て屋の恋。
スカーレット・ベリ子さんは心に揺るぎない萌えアンテナが立った作家です。『女王と仕立て屋』の発行は2016年ですが、1話目は初出が3年前と一番古い作品なのです。しかし本作ですでに「瞳パッチリの美人攻×人相が悪い一重瞼で頰骨のこけた受」で身長は攻<受、という萌えが確立し、初手からこのカップリングを布教する気満々で頼もしい。
気位が高い若手インテリアデザイナー・城野大海はスランプ中で仕事が辛い。つい“その店の服を着た者は成功する”と噂の仕立て屋に服をオーダーしに来てしまう。そしてなぜか大海は無愛想なスーツ職人・志田哲也から目が離せない。だって仕事するのが楽しそう! スーツが出来たらふたりの関係はどうなるの?
作者の萌え要素がより鮮明になるので、人気作『四代目・大和辰之』と現在「シェリプラス」誌に連載中のスピンオフ作『ジェラシー』、新刊『ジャッカス!』、初期短篇集『あめふらし』を複読するのがおすすめ。このカップリングと関係性が満載です。
『女王と仕立て屋』(全1巻) スカーレット・ベリ子
大金持ちで才能溢れるイケメンが地味目な容貌の年上男を押しまくる! 新作『ジャッカス!』まで一気読み推奨。もともと上手い描き手が『マンガ家と作るポーズ集』の作画や監修を経ることで、男の色気描写が精確さを増す過程を決して見逃すな!
新書館 630円
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福田里香 (ふくだりか)
お菓子研究家。CREAで「R先生のおやつ」も連載中。『まんがキッチン おかわり』(太田出版)と文庫版『まんがキッチン』(文春文庫)が好評発売中。
Column
BLマンガ基礎講座
BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!
2017.01.05(木)
文=福田里香