音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
空想委員会「色恋狂詩曲」

時代がかった曲名に知性を感じる

伊藤 今回は、空想委員会のNew EP『色恋沙汰の音沙汰』からの「色恋狂詩曲」です。ちなみに読みは「いろこいきょうしきょく」です。

山口 狂詩曲とは、また、随分、古めかしい言葉を使ったタイトルですね。

伊藤 狂詩曲っていうとわかりづらいけど英語で言うとrhapsody(ラプソディ)。自由な形式で物事をストーリー的に表現する曲のことで、曲調の違うものをメドレー的につなげたりすることが多いですね。

山口 映画では黒澤明監督の『八月の狂詩曲(ラプソディー)』がありました。1991年公開だったそうです。ラプソディという言葉からは、ジョージ・ガーシュインの超名曲「ラプソディ・イン・ブルー」を連想します。

伊藤 ガールズバンドの“ねごと”が2014年に「黄昏のラプソディ」というタイトルのシングル曲を出していたのが印象的。まだ20代のガールズバンドがこんな名作映画のタイトルみたいな曲をやってるんだって(笑)。それはさておき、「色恋狂詩曲」のどこが狂詩曲かというと、そんなに既存のJポップからかけ離れているわけではないんだけど、違った2つのテンポが行ったり来たりするのは印象的。あと、ちょっとだけ複雑な構成ってところに、聴いていてほかの曲にはないドラマチックさがあって、癖になる曲です。

山口 そうですね、時代がかった曲名にしておいて、肩透かし的に今っぽさを入れ込むというやり方は嫌いじゃないです。知的な感じがします。

2016.12.14(水)
文=山口哲一、伊藤涼