「由比ガ浜ロッジハウス」ほか、鎌倉でシェアハウスを運営する島津健さんは、20年も前より “鎌倉でお店をかまえたい”というシェフたちをサポートしてきた頼れる存在。そんな島津さんが選んだ、鎌倉らしい美食スポットとは。
vol.02/島津健さん
(シェアハウス「由比ガ浜ロッジ」管理運営マスター)
古きよき鎌倉に、移住者が運んでくる新しい風
江戸っ子だった島津さん。鎌倉に家族で移住してきて早20年が過ぎた。鎌倉のラスティックな魅力に惹かれ、その環境を守りたいとはじめたのが移住コンサルタント。自分が窓口になることで、移住者が景観を損ねるような建築をしないよう促せればと思ったのがきっかけ。すると、門戸をたたいてきたのは、鎌倉でレストランをオープンしたいという料理人だった。
「鎌倉はエスケープの街。自分もそうだったように、数字と時間に追われる都会での仕事に疲れてこの街に辿り着くのは料理人も同様。そんなシェフたちが2000年以降に増えたことで、鎌倉の食文化は豊かになってきました。東京で腕利きだったシェフがオーナーとなり、店は小さいけど自分の実力を発揮できる料理を出す。立地次第では、それをリーズナブルに食べることができる。イタリアン、フレンチほか、都心に劣らないすごくいいお店が増えています」
まだSNSもメジャーではなかった時代に、地元のグルメ3人組で食べ歩いた店をまとめて『かまくら楽食日記』を自費出版したほど、鎌倉での美食巡りが好きな島津さん。移住するシェフが増えたのは、客層の影響も多いという。
「鎌倉のロハスでサスティナブルな雰囲気を好む自然派の人が移住者には多い。移住してきたシェフも同様の空気感を好むから波長も合う。そこに、互いの友達や馴染みのお客が足を運ぶと、これまた好きなスタイルが似ているから、すぐ打ち解けることができます。地元の人だって然り。昔から住んでいる人はそれが日常だっただけで、結局みんなこの土地の風土が好きなんですね。作り手と食べる側が同じ方向を向いているというのは、料理人にとって幸せな環境だと思います」
最後に、第1回の古澤さんのときと同じ質問を投げてみた。「もし、鎌倉の観光大使になったらどこを案内しますか?」
「古民家巡りでしょうか。北鎌倉の浄智寺谷戸にある古民家を再生したアトリエ『たからの庭』では、様々なイベントが開催されています。あとは、僕の所有しているヨットに乗って、サンセットを見ることかな(笑)」
島津健/Takeshi Shimazu
マルチメディアの制作を経て、鎌倉へ移住。鎌倉らしい家づくりをモットーに「鎌倉移住サポートNPO」を運営し、移住者を多方面からサポート。現在はシェアハウスの運営、古民家の改築を中心に携わる。くるみ入りスモークチーズで有名な「北鎌倉燻煙工房」を、今小路、レンバイ(鎌倉市農協連即売所)、由比ガ浜の3箇所にて経営。趣味はヨット。
2016.11.12(土)
文=吉村セイラ
撮影=深野未季