Column：小田島久恵のときめきクラシック道場

26歳の若き新星・金子三勇士は稀有の知性を持つ注目のピアニスト

CULTURE

2016.9.11

5大ソナタに挑むリサイタルは
3時間以上のハイカロリーな内容

趣味は料理。下ごしらえから盛り付けまで凝り、最近は器にもハマっている。

2016年9月18日は、金子の27歳の誕生日の4日前。デビュー5周年の「5」にかけて、彼が選ぶ5大ソナタを採り上げるという画期的なプログラムだ。モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、バルトーク、リストといった作曲家のソナタが並び、クラシックの205年の歴史を俯瞰する壮大な内容になっている。

「5つのメインディッシュのまわりにサイドディッシュが並んでいるような構成で、スカルラッティのソナタも演奏しますが、これは5大ソナタにはカウントされていないんです。当時は練習曲として書かれたものなので……でも、ピアノソナタの原点であるスカルラッティを入れることで、より多彩な世界を楽しんでいただけると思います。あえて色々な時代の作品を採り上げることでお客様に『同じピアノソナタでも、時代によってこんなに違うんだ』ということを経験していただきたい。ひとつのレパートリーに特化せず、幅広いものを表現していくというのも、自分自身の特徴だと思いますし。

歴史観として、僕は現代に生きていることや、今の環境といったものを肯定する立場でいたいと思います。SNSにしても、様々な文明にしても……。『バッハやベートーヴェンやリストが今生きていたらどう反応するかな？』といつも考えるんですよ。今の楽器と昔の楽器もずいぶん違うけれど、バッハが今のピアノを弾いたなら、きっとペダルを使ったと思うんです」

人間とは何か？音楽とは何か？ピアニストの洞察は止まらない。金子三勇士の演奏は、一緒に歴史を書き込んでいくようなスリルを感じさせるのだ。

「3時間10分のリサイタルの間に休憩は2回ですが、気軽に聴いて楽しんでいただきたいです。その中で集中したり勉強したりする場面があったり、リラックスしたり単純に楽しんだりする『複合型』のリサイタルがあってもいいと思う。ボリューム満点だからといって構えないで、楽しんでいただきたいです」

金子三勇士ピアノ・リサイタル
会場東京オペラシティコンサートホール
日時 2016年9月18日(日)15:00～
https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=442

小田島久恵(おだしまひさえ)
音楽ライター。クラシックを中心にオペラ、演劇、ダンス、映画に関する評論を執筆。歌手、ピアニスト、指揮者、オペラ演出家へのインタビュー多数。オペラの中のアンチ・フェミニズムを読み解いた著作『オペラティック！女子的オペラ鑑賞のススメ』(フィルムアート社)を2012年に発表。趣味はピアノ演奏とパワーストーン蒐集。