これまでの恩を、座長として現場に返したかった
――つらい時期も「俳優をやめる」という選択肢はなかったのですね。
そうですね。すごくシンプルですが、この仕事が好きなんです。もちろん、好きだけで続けられる仕事でないことはわかっています。それでも、続けてきたから今があると思っています。
――ブレイク以降、作品への向き合い方は変わりましたか?
ありがたいことに主役を務めさせていただくことも増えたので、これまでご一緒させていただいた素晴らしい座長の方たちからいただいたご恩をつないでいきたいと考えるようになりました。
これまでに出演させてもらった作品では、現場の空気をとても大切にされているみなさまが本当に多くて。座長が現場に入ると、その場の雰囲気がふっと明るくなったり、安心感が生まれたりするんです。
自然にスタッフの方に声をかけていたり、共演者のお芝居をちゃんと受け止めてくださったり。そういう姿を間近で見てきて、「こういうふうに現場は作られていくんだな」と感じることが多かったので、その方たちからいただいたものを、今度は自分が現場で返していきたいと思うようになりました。
今回は、私が座長という立場でしたので、最後まで一言も話さなかったスタッフさんがいないようにしよう、と頑張りました。編集の方など、現場ではお会いできなかった方もいらっしゃいましたが、せっかくなら、「この現場楽しかったな」とみなさんに思ってほしいと願いながら、撮影現場にいるスタッフの方に意識的に話しかけていました。
――人とのつながりを大切にされる松本さんらしいエピソードですね。「背中で語る」憧れの境地にはどれくらい近づいたと思われますか?
まだまだです。ただ、早く年を重ねたいと思っていたはずなのに、実際に40歳を過ぎると膝が痛いなど、別の問題が出てきて困っています(笑)。
20歳の頃は寝なくても平気でしたが、いまは睡眠不足はてきめんに顔に出ます。それでも、いろいろな人生経験をしてきたからこそ表現できることはたくさんあるはずなので、これからも背中で語れる俳優を目指し続けていきたいです。
