頭と体の接続が切れていたのかもしれない

 ぐんにゃりと起き上がる。起き上がれた! こんなに早く起き上がれるのは、己の失恋史上、初のことである。偉大な進歩だ。キッチンへ向かい、EPEIOSのケトルから湯冷ましをそそいで飲み干した。いきもの用のフードボウルとウォーターボウルにも今日のぶんを補充する。キッチンについてきてごろんと寝転がった猫の腹をなでる。あたたかくてふわふわで、何かがこみあげてくる。涙だった。

 一滴だけ涙を流したら、毎朝のオートメーションが蘇った。そうか。頭にデータがなかったというより、頭と体の接続が切れていたのかもしれない。象印マホービンのスチーム式加湿器を満水にしてスイッチを押す。しゅこ~と蒸気が出始める。IKEAのじょうろで窓際の植物に水をやる。モンステラ、ペペロミア、パキラ、フィロデンドロン、ドラセナ。フィカスの土はまだ湿っているようなので今日は水やりしない。風呂場に行って「自動」ボタンを押してから、再びリビングキッチンに戻って窓を開ける。先日、CO2センサーを買ったら、意識して換気ができるようになった。リーン・ロゼのソファに沈み込み、いきものを撫でているうちに「お風呂が↑わきました↑」と呼びかけられる。

 あたたかい湯船に浸かると、全身の血流が戻ってきた。本当は夜風呂のほうが清潔だし、睡眠の質も上がるらしいのだが、帰宅するともう疲れ切っていて、服を脱いでコンタクトを外したら、そのままベッドにダイブして寝てしまうことが多い(昨年、コンタクトを2週間使い捨てから1日使い捨てに変えたら、傾向が加速した)。翌日の身だしなみの観点では、朝風呂のほうが圧倒的にととのえやすいけど……。だいぶ最適化されてきたものの、まだまだ改善の余地があるモーニングルーティン。どうするといいかなー。あ、なんか、脳内が透き通ってきた。そうか、頭の中が濁っていて、白かったんだ。大丈夫、大丈夫。失恋くらいでは死ねない。

 30代半ば。生活様式は自分の生きざまに合わせてチューニングできてきたのに、失恋に対する対処法はいまだに定まらない。何度繰り返しても絶望するし、食らう。

 前回の失恋はちょうど1年前。2年付き合った交際相手から振られた。幸か不幸か、いまは昨晩できた新鮮な傷口がじゅくじゅくしていて、あの痛みはあとかたもない。

 言い方を間違っただろうか。
 「愛があればすべてどうとでもなります!」と押し切れればよかったのかもしれない。あるいは冷静に、お互いの違いをすりあわせていこうといった返事ができたらよかったのかも。
 いや、タイミングの問題だったかもしれない。先に別の人に告白されていたというし。
 でも、一度断っていたということだから、本当は、どうにかできたのかも……。

 気を抜くと反省をする方向に心が動いてしまう。早すぎる。だいたい、「振られた理由」などというものを振られた側が正確に把握することは、絶対に不可能だ(とくに、振られた直後は)。私はかつて、自分が振った相手が「稼いでない男はダメってことですね」とブログに書いたのを読み、相手に激怒の反論を送ったことがある。振られて落ち込んでいる人間にそんなことを言ってくるのは頭がおかしい、と向こうからキレ返された。

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