アメリカや韓国生まれのパンダの前に人だかり
中国国外で生まれた若いパンダは、中国で人気が高い傾向にある。パンダが生まれた国の人が再会したくて訪れるうえ、中国の人も興味を持つ。中国の人が、返還後のパンダの様子を撮影して、中国国外で閲覧可能なSNSなどに投稿すれば、閲覧数が増えて国外から感謝のコメントが寄せられることも多い。
筆者が2025年5月1日(木)にパンダセンターの都江堰基地へ行くと、シンガポールで生まれたラーラー(叻叻)の前で3人の女性が熱心に撮影していた。折を見て話しかけたところ、大好きなラーラーに会うためシンガポールから来て、都江堰基地の近くに宿泊し、連日通っていると聞いた(参照:シンガポールで初めて生まれたパンダ上野のシャオシャオ&レイレイと同じ2歳という早さで来年中国へ)。
2025年5月2日(金)に訪れた臥龍神樹坪基地では、アメリカ生まれのシャオチージー(小奇跡)の前に人だかりができていた。同基地にいる韓国生まれのフーバオ(福宝)の観覧者はさらに多く、筆者は観覧列に1時間並んだ。混雑は、中国の大型連休中だったせいもあるだろうが、他のパンダと比べてもこの2頭の観客は多かった。
シャオシャオとレイレイも中国で人気者になるだろう。旅行会社はこれまでも、日本から渡ったパンダに会いに行くツアーを催行している。シャンシャンの誕生日に合わせたツアーもあった。また、中国側は日本のメディア関係者やインフルエンサーらを対象に、費用を援助して、中国のパンダを巡るツアーをこの約2年間に複数回、実施している(筆者は一度も参加していない)。
中国外交部の毛寧報道官は、2025年5月26日(月)の定例記者会見で、「日本に滞在するパンダは日本の国民から深く愛されてきました」と話したうえで、和歌山・アドベンチャーワールドにいる4頭のパンダが6月に中国へ返還されることに言及し、「日本の友人の皆様がパンダに会いに中国を訪れることを歓迎します」と述べた。
中国としては、パンダをきっかけに観光客を呼びたい考えもあるのだろう。パンダにとっても、生息地の近くで暮らしたほうが良いかもしれない。一方で、中国国外でパンダを飼育することは、パンダの生理や生態を国際的に研究するほか、パンダの公開や情報発信を通じて、絶滅の危険があるパンダについて多くの人に知ってもらい、さらに世界中の野生動物や生態系を大切にする気持ちを育み、保護につなげるといった意味もある。

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