「超音波は、お腹の本当の『聴診器』だから」

 私は医学生のころ、早く一人前の医師になりたくて、長期休みがあるごとに病院へ行き、指導医と一緒に患者さんの回診や外来対応をしていました。そこで印象的だったのは、患者さんが何かしらのお腹のトラブルを抱えていたら、たとえどんな些細なことでも、指導医が超音波検査を行って確認していたことです。

 私が「大したことはなさそうなのに……。なぜ超音波で確認するのですか?」と聞くと、指導医は「超音波は、お腹の本当の『聴診器』だから、何かあったらすぐに超音波で確認するんだよ」と言われたものです。

 それ以来、私自身も大したことがないと思っても、患者さんに超音波検査をするようにしています。実際に、触診ではそこまで問題がない症例であっても、超音波検査をしてみると、胆石症や胆のう炎、虫垂炎、大動脈瘤、膵炎、肝臓がん、卵巣がんなど、実に多くの病気が発見されるのです。超音波検査は腹部を診察する上での「基本検査」だと思っています。

 40代~50代なら脂肪肝のスクリーニングを目的に、腹部超音波検査を受けてもよいでしょう。60代以降であれば、お腹の中のがんのスクリーニング検査や前立腺肥大の状況を確認することを目的に受けてもよい。幅広い世代に有用であることも、第1位に挙げた理由です。

 料金も5000~6000円程度で、それほど高くはない。副作用もほとんどありません。

 腹部超音波検査によく似た検査として「CT検査」があります。誰でも腹部内の客観的なデータを得られるメリットがありますが、放射線被ばくの心配や1万5000円ほどの高額な検査費用がかかるなど、様々なデメリットもあり、気軽に受けられる検査ではありません。

実績のある施設で受けたほうがよい

 ただし、一方で腹部超音波検査にも欠点があります。

 その一つは、すべての臓器を等しく、隈なく診ることができないという点です。肝臓や胆のう、腎臓や前立腺などは得意分野ですが、膵臓や子宮や卵巣など、体の奥深くにある臓器は、腸内のガスなどの影響で見えにくくなってしまうことがあるのです。

 そのため、例えば「膵臓がんを絶対にスクリーニングしたい」と考える患者さんであれば、腹部超音波検査よりも腹部MRI検査を選択すべきです。あるいは、CT検査を選択するのであれば、単純CTではなく、造影剤を使用する造影CTを受けた方がよいでしょう。

 もう一つの欠点は、検査する医師や技師の力量に左右されるという点です。

 超音波検査は、患者さんが機器の中に入り自動的に撮影するCT検査やMRI検査と違って、先ほども述べたように医師たちが手に持ったプローブを動かしながら診ていきます。操作自体は難しくありませんが、「病気の芽をつかまえる」くらいの積極的な態度で臨まなければ、見つけることはできません。

 ですから、腹部超音波検査を頻繁に行っており、実績もある施設で受けた方がよいのです。

伊藤大介(いとう・だいすけ)

1984年、岐阜県生まれ。東京大学医学部卒業後、同大医学部外科博士課程修了。肝胆膵の外科医を経て、その後、内科医・皮膚科医に転身。日本赤十字医療センターや公立昭和病院などを経て、2020年に一之江駅前ひまわり医院院長に就任。1日に約150人、年間3万人以上の患者を診察する。日本プライマリ・ケア連合学会認定医、同指導医、日本病院総合診療医学会認定医、マンモグラフィ読影医。2025年に日本外科学会優秀論文賞を受賞。

 

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