「オバケ調査」が貸主・借主の安心に

――「オバケ調査」というのは、具体的にどんなことをするのですか?

 まずは、事故の状況や、特殊清掃、リフォーム、室内の臭気などを確認し、賃貸に耐えうる状態かを見ます。また、外壁や共用部分――自転車置き場やポスト周辺、ゴミ置き場などがきちんと管理されているかも確認します。事故物件の場合、部屋以外のマイナス印象が変に意味を持ってしまうことがあるので。

 そしてオーナーさんの予算を聞きながら、優先順位をつけて修繕などの提案をします。管理会社さんとの連携がうまくいっていないようなときは、僕が間に入って連絡を取ることもあります。カチモードはあくまで不動産コンサルなので、管理や売買はしません。

――児玉さんが不動産業界で得た経験と知識は、そこで生かされているわけですね。

 「オバケ調査」も、物件の収益を最大化させる方法のひとつです。他にやっている会社がないので、一見、特殊な会社に見えるかもしれませんが。「オバケ調査」は僕1人で、22時から翌6時まで、室内に滞在して行います。

 録音・録画のほか、電磁波や温度、湿度、気圧、風力、サーモグラフィ、騒音の測定などを行います。こうした方法は、イギリスのオバケ調査会社のやり方を参考に、大学の研究者の方にも協力していただきながら、アップデートしてきました。

 採集したデータは持ち帰って解析し、異常がなければ“異常なしの証明書”を発行。借主には相場に近い賃料で入居していただきます。ただし、住み始めてから異常が見つかった場合は、カチモードから最大100万円の懸賞金をお支払いします。

――借りる側も「万が一のときは引っ越し費用が出る」と思えば安心ですね。

 そうなんです。「オバケ調査」の報告書と異常なしの証明書がオーナーの安心材料に、懸賞金が入居者の安心材料になり、両者納得のうえで事故物件と関わっていただく。その橋渡しこそが、僕らの仕事です。管理会社からの依頼もありますよ。調査の結果、下がった家賃を元に戻せるなら御の字だし、戻せなくても「これだけやったんだから」という、オーナーさんの納得材料になりますから。

――調査の結果、やはり不思議なことが起こるとなったら、どうするんですか。

 その場合は追加調査をし、それでも結論が出なければ、その部屋をカチモードが借り上げます。じつは「不思議なことが起こる部屋」って、一定の需要があると考えているんですよ。

「事故物件」をマネタイズする

――事故物件“だからこそ”借りたい人がいるということですか?

 例えば、大学でそうした研究をしている先生たちの研究材料として。最近では、事故物件に住んで配信をしたいというYouTuberの方や、怪談会に使いたいという方もいますし、不思議な現象に再現性があるなら見てみたいという人は世界中にいると思います。

――アメリカの「ウィンチェスター・ミステリー・ハウス」みたいに。国内でも、そうした部屋を取材撮影したドキュメンタリー映画や番組はありますね。

 もちろんオーナーさんの同意を得ることができれば、ですが。もともと家賃が月10万円の部屋が、年間150万円の収益を出せるとしたら、必ずしも賃貸に出さなくてもいいということになるかも知れません。もし霊とコミュニケーションが取れるなら、お客さんのいるときだけ、ちょっと出てきてくださいとお願いしたいくらいです。

――収益化は実現しているのですか?

 それが机上の空論ではないという検証を行っている段階です。当社が平屋の事故物件を借り上げ、大学の先生と一緒に調査を続けています。オーナーさんも了承済みで、調査に関する取材を受けたりもしながら、収益化できるかどうか試しているところです。うまくいけば、物件を借りたい人とのマッチング事業もできるようになるかも知れません。

――ちなみに、そこで亡くなった方のご遺族への対応は⋯⋯?

 確かにデリケートな問題です。そもそもカチモードは、お祓いや供養の類を推奨していません。もし亡くなった方が幽霊として部屋にいるなら、いてくれていいというスタンスです。それは“誰かの大切な人”ですから。ご遺族の方もいろいろですが、「どんな形であれ、もう一度会いたい」という方も少なくありません。

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