ドラマ「SHOGUN 将軍」でゴールデングローブ賞助演男優賞(テレビドラマ部門)を受賞し、国際派俳優として注目される浅野忠信(51)。長女の佐藤菫(SUMIRE、30)、長男のHIMI(25)もモデルやシンガーソングライターとして活躍中。そんな一家の面々を陰で支えてきたのが、浅野忠信の母、浅野順子さん(75)だ。

 順子さんは、戦後、日本に駐留していたアメリカ人調理兵の父と元芸者の母の間に生まれ、1960年代、山口小夜子やキャシー中島も所属し、横浜・本牧のディスコで華やかに遊ぶことで知られていた美少女グループ「クレオパトラ党」の一員だった。さらに、60歳を過ぎて出会った恋人に才能を見出され、画家デビューしたという特異な経歴を持つ。

 彼女と同時代を生きてきた畏友、ミュージシャンの近田春夫さん(74)を聞き手に迎え、稀代の女傑の半生を彼女のアトリエで掘り下げる。

 全7回にわたる大河連載は、今回で大団円を迎えることとなる。

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忠信出演作で一番のお気に入りは「FRIED DRAGON FISH」

近田 40年近くのキャリアを積み重ねてきた忠信さんの出演作は膨大な数にのぼります。「SHOGUN 将軍」をはじめ、海外の作品にもたくさん出演してるよね。

浅野 なかでも、2008年に日本公開された『モンゴル』は私のお気に入り。この映画で忠信が演じたのは、若き日のチンギス・ハン。セルゲイ・ボドロフというロシア人の監督は、ビジュアルのセンスを大事にするタイプで、そこがいいのよね。

近田 アーティストとしての順子さんのアンテナに引っかかったわけだ。去年、僕は石井岳龍監督の『箱男』を観たけど、あの映画での忠信さんの怪演は見ものでした。

浅野 私、試写会に招かれて、観に行ったのよ。忠信扮する偽医者が、箱の中からいやらしい視線で女性を覗いてるシーンがあるじゃない? こちとら母親だから、息子がああいう役を演じると、妙にリアルに感じちゃって、なかなか正視するのが難しくってさ(笑)。

近田 いたたまれなくなっちゃったのね(笑)。あの映画、安部公房の原作の雰囲気ともまた違ったテイストが醸し出されていて、なかなか面白かったよ。順子さんにとって、忠信さんの出演作で一番印象に残っているものというと何になるの?

浅野 あの子が19歳の時、1993年に放映された「FRIED DRAGON FISH: THOMAS EARWING'S AROWANA」かなあ。岩井俊二監督が手がけた単発のテレビドラマなんだけど、若い頃の忠信の身体の綺麗な感じが上手く表現されてて、好きなのよ。今まで、何回繰り返し観たか分からないぐらい。だから、台詞まですっかり覚えちゃった(笑)。

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