垢抜けないメガネとパーマ

 等身大の弱さをはらんだ主人公を演じきるため、クーは従来のイメージを一新することにも意欲的に取り組んだ。

リー ルイス・クーは僕たちを信頼し、「どんなふうにしてもいいよ、受け入れるよ」と言ってくれました。今までとは違うスタイルにしていい、むしろそうしてほしいと。

マンユー 垢抜けないメガネはルイス・クーが自分で選んだもの。昔、メガネに関係する仕事をしていたそうで、絶妙なものを選んでくれました。かっこよくないメガネをかけ、髪型はパーマにして、イマイチなルックスにしたんです。撮影地のマレーシアでも彼は有名ですが、街中で撮影していても誰もルイス・クーだと気づかなかった。成功を確信しました。

 撮影をマレーシアで実施したのは、海外で映画を撮りたいという意欲がリー&マンユーにあり、現地での資金調達も成功したため。当初は日本での撮影を計画し、脚本も日本を舞台に執筆、ロケハンのため来日したこともあったというが、残念ながら実現しなかった。

マンユー 僕たちは香港映画をもっと外部に出していきたいのです。ジャッキー・チェンがアジア各国で映画を作ったように、別の土地で映画を撮り、新しいマーケットを開発したい。そこで、ある日本の有名俳優に脚本を見てもらいましたが、「日本の警察に悪人はいない」と言われて諦めました。マレーシアを提案してくれたのはルイス・クーでしたが、もちろんマレーシアの警察にもこんな悪人はいないと思います(笑)。

台湾人俳優との化学反応

 異国マレーシアで探偵業を営むアウヨンが出会うのは、殺人事件を追う刑事チェン・カンミン。演じるのは『1秒先の彼女』や『オールド・フォックス 11歳の選択』に主演した台湾人俳優リウ・グァンティンだ。

リー マレーシアで撮ることになったので、出演者を香港人だけで固めては意味がないと思いました。マレーシアはさまざまな国から人々が集まり、いくつもの言語が混ざりあった多元的な文化の場所。現実の状況をキャスティングにも反映したいと考えたんです。

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