ならば、どうやって見分ければいいのか?

 「もう選び方なんてないのではないか?」とため息が聞こえてきそうですが、実は我々専門家がオリーブオイルを選ぶときには、いくつかの選ぶための「カギ」があるのです。その一つは、何といっても生産者。どんな状況下でも、ひたすら品質を追求してすばらしい風味のオリーブオイルを作り続ける良心のある生産者は少なからず存在します。それを見分けるポイントは、農園名であったり生産者名であったり、あるいはブランド名であったりしますが、これらが特定できれば、間違いない、美味しいオリーブオイルを買い続けることができます。

 ちょうどワインや日本酒を選ぶときのように「銘柄」がオリーブオイルでも重要なポイント、というイメージを持っていただければよいでしょう。

スペインを代表する「銘柄」ブランドオリーブオイルをつくる生産者(スペイン・トレド市郊外)。

 でも「銘醸ワインのドメーヌやシャトー名ならわかるけど、オリーブオイルはちょっと……」という皆様、ご安心を。銘柄に詳しくなれる簡単な方法があるのです。それは、世界各地で開かれるオリーブオイル品評会の結果発表をチェックすること。今では多くの国々で開催されるほどオリーブオイル品評会は盛んになっていますが、これも「品質」の目安が揺らいでいることの表れでしょう。

 もちろん、こうした品評会の中にも「賞」をカネで売ったり、「眉唾もの」の審査員だったり、明らかに偏った審査結果を出しているものもあります。国や国際機関ですら牛耳った不正を働く人々に、民間の開催する品評会の結果を捻じ曲げることは、いともたやすいことかもしれません。

 しかし、すばらしい品質をつくる生産者であれば、こうした怪しい品評会も含め、いくつもの品評会で毎年受賞を重ねているはずです。それこそが、揺るがぬ品質の証、というべきものでしょう。

 海外のサイトまでチェックして探すのは大変、という方は、日本で行われている品評会の結果を参考にすればよいでしょう。私が理事長を務めている日本オリーブオイルソムリエ協会が主催者となって“OLIVE JAPAN(R)”という国際オリーブオイルコンテストを2012年から開催しています。日本流の厳格で公正公平な審査を行うことと、「オリーブオイルソムリエ(R)」という、生産者側ではなく消費者側の立場で開催される、世界でも唯一のコンテストで、2015年の開催では世界の22もの生産国から441品目の応募がありました。

 2015年の審査結果では、12品の素晴らしいオリーブオイルが最優秀賞に輝き、152品が優れたオリーブオイルとして金賞、さらに134品が銀賞を授与されています。その一方で、全体の3割に相当する143品は、コンテストに応募した商品であるにもかかわらず欠陥風味があると判定されたことに、改めて驚かされました。輸入販売者だけでなく、生産者ですらオリーブオイルの「品質」に関する正しい知識を持っていないことの表れでもあるからです。

日本で開催されている唯一の国際オリーブオイルコンテスト“OLIVE JAPAN”。

 次回は、多くの人を魅了する優れた品質のオリーブオイルとはどういうものか? またそれをどう生かせば、その素晴らしい風味を存分に楽しむことができるのか? その活用術にスポットを当てたいと思います。

 あなたのオリーブオイルの使い方、自信ありますか?(次回に続く)

※「オリーブオイルソムリエ(R)」及び「OLIVE JAPAN(R)」は、一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会が全権利を保有する登録商標です。協会認定の有資格者のみが「オリーブオイルソムリエ(R)」を表示することを認められています。

多田俊哉(ただ としや)
日本オリーブオイルソムリエ協会 理事長。国際基督教大学及びトリニティカレッジ卒業。モルガン銀行、JPモルガン証券、大手食品商社を経て、大前研一氏主宰(株)大前・ビジネス・ディベロップメンツ設立に伴い執行役員として経営参画。2009年(社)日本オリーブオイルソムリエ協会を設立。代表理事・理事長。海外の主要オリーブオイルコンテスト審査員歴任。香川県オリーブオイル品評会審査員。日本初の国際オリーブオイルコンテスト「OLIVE JAPAN」主催者であり、日本を代表するオリーブオイルの専門家として世界に知られる。オリーブオイルビジネスの不正を暴いた『エキストラバージンの嘘と真実』(トム・ミューラー著、日経BP社)で解説を執筆。