いま、大注目のオリーブオイルを、「品質」に注目して再検証! 食のプロ、オリーブオイルのプロである、日本オリーブオイルソムリエ協会理事長の多田俊哉さんが、食卓に置かれるオリーブオイルのチェック法と活用法を解説します。

 なんと、市場に出回る多くが、品質偽装や欠陥商品といったショッキングな実態から、本当に体に良い美味しいオイルの選び方、活用法をワンポイントアドバイス。きっと新しいオリーブオイルの魅力に取りつかれることでしょう。

 連載終了後には、実際にオリーブオイルの「品質」と、本当の「美味しさ」を体験できるセミナーも開催!

 第4回となる今回は、真の「エキストラバージン」オリーブオイルとは、いったいどのようなものか? その素晴らしさを知るヒントをこっそりお教えしましょう。きちんと良い品質のオイルを選ぶことができれば、あなたの料理の世界も無限に広がっていきます!

イタリアで「規格偽装の疑いで捜査」のニュースが飛び込んできた!

 エキストラバージンオリーブオイルの品質偽装の実態を特集するこの連載のさなかに、イタリアからホットなニュースが飛び込んできました。“食の町”として知られる北イタリア・ピエモンテ州トリノ市の検事と検察当局が、スーパーで売られている有名イタリアブランドのオリーブオイル7種について、「エキストラバージン」規格を偽装している疑いで捜査していると発表したのです。

 このニュースは日本でも配信(外部リンク)されましたから、ご存知の方もおられるかもしれません。名指しされた7種のオリーブオイルの中には日本の店頭に並んでいるブランドもあり、あらためてこの問題が身近に感じられたのではないでしょうか。

 疑いをかけられたメーカーの一社は直ちに疑惑を否定し、全面的に争う様相を見せていますが、その主張は、「問題ない」とされた化学分析値ばかりを強調し、結果の悪かった風味検査は「主観的で悪意に満ちて行われたものだ」として再検査を要求しています。

 再検査を行ったところで結果は同じでしょうし、“正確な”再検査を行えば、むしろ困るのはメーカー側でしょう。もともと化学分析は設定基準がかなり甘く、悪い品質でも合格してしまいますが、風味検査の基準は厳格だからです。つまり風味検査さえ適正に行われていれば、品質偽装された商品が市場にあふれることは無かったはずですが、人が行う検査であることを良いことに検査官を取り込み、不正な審査や偽証が横行するなかで品質偽装は続けられてきたのです。

 この問題の背後には、今までなぜそうした不正な風味検査が放置されてきたのか? 今回なぜオリーブの大産地でもない北イタリアの地方の検察当局と警察が動いたのか? といった“深い闇”の部分があるのですが、それについては別の機会に譲ることとしましょう。

 数カ月前には、品質偽装されたオリーブオイルがアメリカの消費者グループにより集団賠償請求を提訴されるなど、世界各地で正しい“品質”に向けた議論に光があたり始めました。しかしながら、疑惑の総元締めともいえる国際オリーブ理事会(IOC)は、任期を迎える事務総長に代わる新しいリーダー選びに没頭中で、当事者意識のかけらもないようです。

 何も知らない消費者が、粗悪なオリーブオイルを「健康に良い」と信じて大切に使う光景には涙を禁じ得ませんが、前回記した選び方を参考に、きちんとした品質である本物の「エキストラバージン」オリーブオイルを選んで使えば、料理の世界ばかりでなく食生活がガラリと変わるほどの革命をもたらします。今回は、優れたエキストラバージンオリーブオイルの素晴らしさを伝授いたしましょう。

2015.12.07(月)
文・撮影=多田俊哉(日本オリーブオイルソムリエ協会理事長)