いま、大注目のオリーブオイルを、「品質」に注目して再検証! 食のプロ、オリーブオイルのプロである、日本オリーブオイルソムリエ協会理事長の多田俊哉さんが、食卓に置かれるオリーブオイルのチェック法と活用法を解説します。

 なんと、市場に出回る多くが、品質偽装や欠陥商品といったショッキングな実態から、本当に体に良い美味しいオイルの選び方、活用法をワンポイントアドバイス。きっと新しいオリーブオイルの魅力に取りつかれることでしょう。

 連載終了後には、実際にオリーブオイルの「品質」と、本当の「美味しさ」を体験できるセミナーも開催!

 第3回となる今回は、正しいオリーブオイルの選び方、見極め方をこっそり教えます。店頭でも選び出すのは難しいとされるオリーブオイル。皆さんは、何を信じて選んでいますか? 今回はその「常識」にダメ出しします!

品質認証制度のマークはあてにならない!

 品質偽装されたひどい風味のオリーブオイルが市場にあふれる一方で、本当に優れた品質、そして素晴らしい風味を持ったオリーブオイルは数多く作られています。その特別な風味に触れると、多くの人がオリーブオイルにはまってしまう、というのもよく言われることです。何の苦労もなしに素晴らしい品質のオリーブオイルを買うことができれば、こんな良いことはないのですが、少しでも品質の良いものを選ぼうとすると、きわめて巧妙なトリックが仕掛けられていて、何も知らない消費者がまんまとその罠にはまってしまいます。

 店頭にあまりにもたくさん並ぶ「オリーブオイル」。皆さんは、何を見てその中から自分の一本を選んでいますか?

 ラベルに書いてある「エキストラバージン」という表記はもはやまったくあてにならないことはすでに申し上げた通りです。では、これ以外にラベルに書いてある事柄は、どこまで信用してよいのでしょうか?

 例えば、「最高品質」、「低温圧搾」、「○○政府公式認定」、「○○機関認定」、「単一農園」、「単一品種」、あるいは、ヨーロッパなどでEUや政府が定めた地域特産品認証であるDOPやIGPのマークなど、それらしい表記がラベルに躍っています。

EUで始まった産地呼称の制度。厳しい品質基準もあわせもったはずであったが……。

 結論から申し上げましょう! これらのどの表記も、中身の品質とは無関係です。

 「えっ! 生産国の政府が認定したマークもあるのに?」と思われるかもしれません。確かに「低温圧搾」と表記するにはEU法規定に準拠する必要がありますし、産地認証制度であるDOPやIGPの制定にはEUや各国の政府も関与しています。当然DOPやIGPにも品質規定はありましたが、これらもその実際の運用においては国際オリーブ理事会(IOC)が定めた「エキストラバージン」とまったく同じ運命をたどり、有名無実化してしまったのです。

 なぜそんなことになったのか? その背景には不正がはびこることを許してしまった大きな共通の問題が潜んでいます。

 これまで「公的で公正」と信じられてきた政府や公的団体による品質認証制度は、実はその実態として生産者自身が品質認証に直接関与し、生産者以外の第三者によるチェックは全く働いていないものでした。つまり、自分たちで作ったものの良し悪しを自分たちで認証して販売する、というもの。これでは、公正な品質規格の判定や運用は期待できません。「政府」といっても生産国の政府ですから、生産者の利益を最大限に支援することに終始したわけです。したがってオリーブオイルの世界にあっては、「政府認証」とか「公認」も含め「公的機関」や「団体」の認証、といった言葉こそがまったくあてにならない、という状態に陥ったわけです。

 余談ですが、読者の中には「オーガニック」、つまり有機栽培製品にこだわる方も多いでしょう。オリーブオイルにももちろんオーガニック栽培・製法でつくられたものも多く存在します。では、その「オーガニック」表記も信じることはできないのでしょうか?

さまざまな有機栽培認証マーク(左からEU、アメリカ、日本)。オリーブオイルも今やオーガニックばやり。

 オーガニック認証に関しては、多くの国が法制度を整備していますが、実際の認証は民間の認証審査機関に委託して行われていることが多いため、比較的公正に運用されていると言われています。ですので、概ねオーガニック認証マークがあれば、栽培や製法においてはオーガニックの基準に準拠している、と信じてよいでしょう。ただし、注意しなければならないのは、オーガニックの認証マークは、あくまで栽培法や製法の認証だということです。ボトルの中身の商品の「品質」を表すものでは一切ありません。オーガニックのマークがあるからといって、真の「エキストラバージン」である保証は一切ないのです。

2015.11.23(月)
文・撮影=多田俊哉(日本オリーブオイルソムリエ協会理事長)