値段も品質の目安にはならない!

 さて、本題に戻って、買う際の「目安」ですが、「品質偽装は特売の安いオイルだけで、さすがに値段の高いオイルではそんなことはないだろう」、つまり値段は品質を表す目安になっているのでは? と考える人も多いでしょう。たしかに店頭を見れば、500グラムで500円を切るような商品から、高いものでは1万円近いものまで、なんとその価格差は10倍を超えるほど。安価な商品で高品質を求めることは難しいとしても、「高ければ高いほど品質は良いのではないか?」と考えてしまいがちですが、はたしてこれは正しいでしょうか?

 残念ながら、「価格」も「品質」を反映しているとはいえず、「値段で決める」のも正しい選び方とはいえません。なぜなら、店頭での小売価格は、輸入業者の仕入れ価格と利幅で決まっており、品質とは無関係です。確かに品質の高い商品であれば仕入れ価格も高いのでは? と考えがちですが、例えばスペインの店頭では、特殊なヴィンテージ的な商品を除けば、高品質のオリーブオイルでも十数ユーロで販売されており、品質偽装されたブランドのオリーブオイルと大きな価格差はないのです。

 「商品ラベルに書いてあることは一切信用できない」し、「値段も品質の目安とはならない」、という救いがたい状況に、消費者はどう立ち向かったらよいのでしょう?

オリーブオイルソムリエ(R)などの専門家が開設する店舗も増えてきている(静岡市内の専門ショップ)。

 数少ない専門家のいる店や「オリーブオイルソムリエ(R)」が経営するお店に行ってアドバイスを受けながら、自分の好みにあわせて買うことができれば、申し分ないでしょう。しかしそんなことはなかなかできませんし、オリーブオイルソムリエ(R)のいる店はまだまだ限られています。

 ではせめて高級なイタリア料理店に行けば、間違いなく真のエキストラバージンオリーブオイルを味わうことができるのでは、と思っていると、実はレストランが仕入れるオリーブオイルであっても消費者が買うオイルと出所はほとんど変わらず、シェフやお店の仕入れ担当者が正しく品質を理解していなければ、高級店でもひどい欠陥風味のオリーブオイルに出会うこともしばしばです。

2015.11.23(月)
文・撮影=多田俊哉(日本オリーブオイルソムリエ協会理事長)