オリーブオイルの持つ、独特の「風味」

ゆでたてのパスタに搾りたてのフレッシュなオリーブオイルをかける。これだけでも十分なごちそう。

 オリーブオイルは、「どうもあの独特の風味が苦手で……」という声を耳にすることも多く、また私が代表を務める日本オリーブオイルソムリエ協会(外部サイト)のオリーブオイル講座(外部リンク)で、講座に来たばかりの人にアンケートを取ると、品質偽装された粗悪な商品の方が「美味しい!」と言う人もいて大変驚かされます。その一方、オリーブオイルは、イタリア料理やスペイン料理など、産地の料理は言うに及ばず、今では和食の料理人たちもその使い方を熱心に研究するほど、料理の“ベース”を形成するもの、日本食で言えば、“出汁(だし)”にも通ずる基幹的な食材として繊細な料理人たちを魅了しています。

 このギャップはいったいどこから来るのでしょうか?

 講座でのアンケート結果は、長いあいだ消費者が、本物のエキストラバージンオリーブオイルを知らずに粗悪な品質のオリーブオイルに“慣らされて”しまったことを物語っていますが、ひどい風味のオリーブオイルを料理で使えば不味いものになってしまうのは当然で、その為に苦手意識を持つ消費者を増やしてしまう、という悪循環が続いています。

 良くも悪くも“風味がある”というところが、オリーブオイルが他の油と異なる大きなポイントですが、この特有の“風味”は、その独特のつくられ方に由来しています。特に化学的に「精製されていない」ということが重要で、簡単に言うと、搾りたてのオリーブ果実のジュースから油分だけを分離しただけで何も足さない天然のオイルがオリーブオイル、ということになります。精製しないので油分の中にたくさんの有用成分が溶け込んでいて、それをそのまま食することができます。この有用成分こそがオリーブオイルの独特の風味を形作り、また健康機能を高めてくれるものとなっているのです。

 オリーブオイルは現在世界の40カ国以上で生産され、オリーブの品種数は2000種とも3000種とも言われています。この産地や品種の違いが、ワインでいう「テロワール」となって、様々な“風味”を形成しています。つまり、エキストラバージンオリーブオイルの特徴である独特な“風味”は一つではなく、生産者や産地・品種が違えばまったく異なる風味となり、また収穫された年によっても異なります。

 こうした違いが、料理人などを魅了するオリーブオイルの奥深さとなっているのですが、風味を決定づける産地や品種に関しては、さらに大きな落とし穴が消費者を待ち受けています。

2015.12.07(月)
文・撮影=多田俊哉(日本オリーブオイルソムリエ協会理事長)