いま、大注目のオリーブオイルを、「品質」に注目して再検証! 食のプロ、オリーブオイルのプロである、日本オリーブオイルソムリエ協会理事長の多田俊哉さんが、食卓に置かれるオリーブオイルのチェック法と活用法を解説します。

 なんと、市場に出回る多くが、品質偽装や欠陥商品といったショッキングな実態から、本当に体に良い美味しいオイルの選び方、活用法をワンポイントアドバイス。きっと新しいオリーブオイルの魅力に取りつかれることでしょう。

 連載終了後には、実際にオリーブオイルの「品質」と、本当の「美味しさ」を体験できるセミナーも開催!

 第5回となる今回は、すばらしい「エキストラバージン」オリーブオイルの使いこなし術を披露します。専門家が勧めるその奥義を知り、使い方の誤った“常識”から解き放たれれば、料理の腕が2ランクも3ランクもあがること間違いなしです!

欠陥オリーブオイルを使うほうがもっと問題

 いつの頃からか、エキストラバージンオリーブオイルは「加熱調理には向いていない」、あるいは、「熱を加える料理には『ピュアオリーブオイル』(精製したオリーブオイルにエキストラバージンオリーブオイルを少しだけ加えた混合油)を使った方が良い」ということが言われてきました。

 エキストラバージンオリーブオイル特有の苦み、辛さなどが、煮物や揚げ物に合わない、あるいは微量に含むアンチエイジング成分が加熱により体に悪いものに変わってしまう、などいかにも「もっともらしい」ことも語られて、信じている人も多いのではないでしょうか。

 悲しいことですが、こうした根拠のはっきりしない話が出回ってしまうところも、オリーブオイルの真実がまだ良く知られていないことを物語っています。

そのままサラダや野菜にかける、というのが最も簡単な使い方。しかし優れた風味のオリーブオイルは使い道を選ばない。

 結論から申し上げると、「エキストラバージンオリーブオイルが加熱調理には向かない」というのは“誤った常識”です。優れた品質のものであれば、用途は選びません。もちろん油ですから、限りなく加熱していけば他の油と同じように発煙し大変なことになってしまいますが、ふつうに使う分には何の問題ありません。

 問題が無いどころか、一つの例ですが、天ぷらの揚げ油として使った場合、天ぷら油よりも衣の水分を飛ばしてくれて「カラッ」と揚げることができますし、毎回きちんと漉して使えば劣化もしにくく、天ぷら油よりも回数が多く使えます。

 オリーブオイルの辛くて苦い風味が料理の味を変えてしまうのでは? と質問されることもありますが、さわやかでフローラルなアロマは残りますが、加熱することで特有の辛さや苦さはさほど気にならなくなります。むしろ香りが引き立つことにより料理の印象が引き締まり、風味が良くなります。

 こうした心配よりももっと問題にしなければならないのは、品質偽装された欠陥のある「エキストラバージン」オリーブオイルを料理に使うことです。腐敗臭や酸化臭、カビ臭などのあるオイルをそのまま使えば、ひどい風味が食材に伝染してしまい、せっかくの味を台無しにしてしまいます。どんなに香りのよいポルチーニ茸やトリュフなどの高級素材を使おうとも、オリーブオイルがダメならその料理は一瞬で崩壊し、とても食欲が湧くようなものではなくなってしまうのです。

スペインの代表的な煮込み料理「アヒージョ」。もちろん加熱して煮込みに使われるのはエキストラバージンオリーブオイル。

 調理した素材のエキスが良くしみ込んだパスタやエリンギ茸、アヒージョの具材などを想像してみてください。あるいは天ぷらの衣でも良いでしょう。それらが、欠陥オイルのひどい風味をまとっていたら、どうでしょう?

 「オリーブオイルの独特の風味が苦手で……」と言う方も多いですが、それはオリーブオイルそのものが苦手なのではなくて、そうした欠陥オイルで作られた「不味い」料理が苦手なだけなのです。「不味い」から苦手、あるいは「好きではない」、これはごく当然の反応です。そういう方々にこそ、ぜひ本物のすばらしいエキストラバージンオリーブオイルで調理した素晴らしい料理を楽しんでもらいたい、と願っています。

2015.12.21(月)
文・撮影=多田俊哉(日本オリーブオイルソムリエ協会理事長)