オリーブオイルの「魔法の一滴」で料理ががらりと変わる!
オリーブオイルが「味」をつくる重要なカギを握っていることを知る、これが使いこなし術成功への唯一の道ですが、では、いったいどのような風味をオリーブオイルによって加えれば良いのか? その具体例を少し紹介しましょう。
例えば、緑の香り立つ新鮮なオリーブオイルは、時間がたち生臭くなったマグロの刺身にかければ、そのフレッシュな緑のアロマがマグロの生臭さをたちどころに消して新鮮な味わいを取り戻してくれます。また、養殖臭の気になるハマチやブリの刺身にかければ、養殖臭が消えてさわやかなオリーブオイルの風味とともに美味しく食べることができます。その一方で魚のはらわたやアワビの肝に苦いオリーブオイルを合わせると、意外なことに素材の苦さをオリーブオイルの油分が包み込んで甘さに変え、まろやかな風味にしてくれます。
肉を焼く時、香りづけと臭み消しに塩・コショウを使うことはよく知られていますが、焼く前の肉をオリーブオイルに少しの時間漬けておくと、塩によって肉が固くなってしまうことを防ぎ、同時に肉の臭みも和らげ美味しく焼きあげることができます。
最初にも触れましたが、エキストラバージンオリーブオイルで天ぷらやフライを揚げれば、オリーブオイルのさわやかな風味で揚げ物の油っこさは後退し、カラっと揚がります。
そして、もはや鉄板ともいえるトマトソースでは、煮込むほどにオリーブオイルのフローラルなアロマがトマトの尖った酸味を包み込み、食べた時の後味やその余韻をずっと心地よいものにしてくれます。
これらはほんの一例ですが、わずか数滴のエキストラバージンオリーブオイルが、料理の様相をがらりと変えてくれることもしばしばで、まさに「魔法の一滴」とでも呼ぶべきものでしょう。
この「魔法」を体感してしまうと、オリーブオイルを使って様々な料理にチャレンジしたくなりますし、また食材との組み合わせを一層楽しみたくなる衝動に駆られます。もちろん、すべてのオリーブオイルがどんな食材にもマッチするわけではありません。たとえば繊細なホタテの刺身や白身魚の刺身の風味が、苦くて辛いオリーブオイルによって台無しになってしまうこともありますし、力強いジビエの肉料理にまろやかなオリーブオイルをかけてもまったく何の風味も感じられない、ということもあるでしょう。
オリーブオイルの味を見て、組み合わせる食材を考える、こうした新しい習慣に慣れてきたら、次はさらにレベルアップし、食材の風味や調理法によってオリーブオイルのタイプを使い分ける。それができるようになれば、オリーブオイルの素晴らしい世界は完全にあなたのものです。
日々の暮らしに、魅力あふれるエキストラバージンオリーブオイルがある素晴らしい食生活を、ぜひ送っていただきたいと願っています。
※本文で記載した使いこなし術や、良いオリーブオイルと悪いオリーブオイルの食べ比べなどは今後のセミナーで体験することができますので、ぜひご期待ください。
※「オリーブオイルソムリエ(R)」及び「OLIVE JAPAN(R)」は、一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会が全権利を保有する登録商標です。協会認定の有資格者のみが「オリーブオイルソムリエ(R)」を表示することを認められています。
多田俊哉(ただ としや)
日本オリーブオイルソムリエ協会 理事長。国際基督教大学及びトリニティカレッジ卒業。モルガン銀行、JPモルガン証券、大手食品商社を経て、大前研一氏主宰(株)大前・ビジネス・ディベロップメンツ設立に伴い執行役員として経営参画。2009年(社)日本オリーブオイルソムリエ協会を設立。代表理事・理事長。海外の主要オリーブオイルコンテスト審査員歴任。香川県オリーブオイル品評会審査員。日本初の国際オリーブオイルコンテスト「OLIVE JAPAN」主催者であり、日本を代表するオリーブオイルの専門家として世界に知られる。オリーブオイルビジネスの不正を暴いた『エキストラバージンの嘘と真実』(トム・ミューラー著、日経BP社)で解説を執筆。
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2015.12.21(月)
文・撮影=多田俊哉(日本オリーブオイルソムリエ協会理事長)
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