エキストラバージンは「調味料」と考えよう!

 使いこなし術で重要なのは、オリーブオイルと合わせる食材とでベストなハーモニーを「作り出すこと」。これには少しばかり「はかりごと」をめぐらせる必要があります。

 料理においては、味付けをする時に特に神経を使うものですが、塩味や酸味などを付ける際にその「加減」がとても大切です。「塩梅(あんばい)」という言葉もある通り、塩辛すぎても食べられませんし、酸味が足りないと味が薄く美味しくないですから、使う塩や酢の量を慎重に調節します。

 実は、オリーブオイルを使うときもまったく同じなのです。

イタリアの伝統的な白いんげん豆のスープ。料理の味の決め手はエキストラバージンオリーブオイルのコクと香り。

 「えっ、オリーブオイルって『調味料』なの?」と改めて驚く方もいるかもしれませんが、オリーブオイルのその香りと風味を「調味料」のように使いこなして初めて、その素晴らしい世界は開けてくるのです。

 しかも、前回述べたように、エキストラバージンオリーブオイルの風味は一つではありません。オリーブの品種や産地によって、苦みや辛みの強いものがあるかと思えば、バナナやトロピカルフルーツを思わせる、甘くこってりした風味のものもあります。一口に「調味料」といっても、オリーブオイルの場合は一本一本がその風味の個性によってまったく別種の「調味料」となっているのです。

 最近では、塩でも、様々な種類の塩があって、合わせる食材や料理法によって使う塩を変え、風味の変化を楽しむということも行われていますが、オリーブオイルの場合も同様です。辛いオイルなら、その辛さを生かして料理にスパイスとしての要素を加え、緑やミントのアロマの強いオイルであれば、こってりした食材に合わせてさわやかさを加えるなど、イメージをしてみることが大事です。

 そのための第一歩は、オリーブオイルを買ったらまずテイスティングをして風味を確かめてみる。そして料理する前にもテイスティングをして素材とのハーモニーを想像する。そんなことから始めてみてはいかがでしょう。

2015.12.21(月)
文・撮影=多田俊哉(日本オリーブオイルソムリエ協会理事長)