Magnificent View #418
聖ポール天主堂跡(マカオ)

(C) Robert Harding Images / Masterfile / amanaimages

 マカオのガイドブックやツアーパンフレットなどでよく見かけるこの建物。これは、世界遺産でもある聖ポール天主堂跡(17世紀初頭に建設され、1835年に火事で崩壊した教会とその隣にあった神学校跡の総称)に残るファサード(正面壁)で、マカオのシンボルでもある。

 場所自体は有名だが、現存する建物はファサードのみ。そのため、ときに「がっかりスポット」という不名誉な烙印を押されてしまうこともある。だが、ここは日本との関わりがとても深い場所だ。

 天主堂の建設には、江戸幕府によるバテレン追放令(キリスト教弾圧の令)を受けてマカオへ渡った日本人キリシタンも携わっていた。ファサードに施された数々の彫刻の中には、聖母マリアが7つの頭を持つ龍を踏みつけたものがあるが、一説によると、龍はキリシタンに踏絵を強制した徳川家康を擬しているのだとか。

 江戸時代に日本を追われたキリシタンたちの、哀しくも切ない想いが深く刻まれた天主堂跡。「観てがっかり」などと言わずに、じっくりと時間をかけて訪れたい場所だ。

Column

今日の絶景

この広い地球上には、まだまだ知られざる素晴らしい景色がある。思わず息を飲んでしまう雄大な自然、ミステリーにあふれた驚きの奇観、そして、人間の文明が刻んだ偉大な足跡……。ここに、選りすぐりの絶景をお届けします。さあ、ヴァーチャルな世界旅行へと出かけよう!

2014.11.22(土)
文=芹澤和美