現代まで通じる美術に対する価値観や姿勢
こうしたコレクションの管理を担当し、センスよく見せるための取り合わせやマニュアルを作り、買い入れる作品を選定、その価格まで決定していたのが、父子三代にわたって将軍家に仕えた「アートディレクター」の能阿弥、芸阿弥、相阿弥だ。そして将軍家のこのようなあり方が、絵画・工芸品を飾る際に取り合わせや趣向を意識すること、また美術品の価値を「価格」で量ること、そしてよりよい形に作品を改編することなど、現代まで通じる美術に対する価値観や姿勢を形づくっていったのだ。
将軍家の経済力が悪化し、応仁の乱が勃発した15世紀後半、コレクションはすでに流出を始めており、外部に散逸した「東山御物」は過剰な来歴が付加され、その実相が見えなくなっていく。その中の上澄み中の上澄みである作品を結集することで、たとえば狩野永徳、長谷川等伯、俵屋宗達らが、これら唐物をどのようにかみ砕き、何を採り入れ、何を捨てて、より自分たちにとって好ましい、「日本らしい」表現としたのか、より深く理解できるはずだ。そして、根津美術館での展示ののち、三井記念美術館へ、ふたつの展覧会にまたがって展示される《馬蝗絆》《漁村夕照図》という2件の作品は、日本美術のひとつのあり方を象徴している、ともいえる。
右:重要文化財「豊干図」(伝)梁楷筆・石橋可宣賛 南宋時代 展示期間:10/4~11/24
『名画を切り、名器を継ぐ─美術にみる愛蔵のかたち─』
URL http://www.nezu-muse.or.jp/
会場 根津美術館
会期 2014年9月20日(土)~11月3日(月・祝)
休館日 月曜日 ただし10月13日(月・祝)は開館し翌日休
料金 一般1,200円、学生(高校生以上)1,000円、中学生以下無料
問い合わせ先 03-3400-2536
『東山御物の美―足利将軍家の至宝―』
URL http://www.mitsui-museum.jp/
会場 三井記念美術館
会期 2014年10月4日(土)~11月24日(月・振替休)
休館日 月曜日 ただし10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・振替休)は開館
料金 一般1,300円、大学・高校生800円、中学生以下無料
問い合わせ先 03-5777-8600(ハローダイヤル)
Column
橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」
古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。
2014.09.27(土)
文=橋本麻里