2014年6月22日、青山の根津美術館にて、「1日でアートがわかる! CREA×橋本麻里トークイベント@根津美術館」を開催しました。その模様を、3回に分けてレポートします!

» 第1回 “ART”はいつ、どうやって生まれた?
» 第2回 美術と一生つきあうための見方とは?

コレクションは、所有するというよりも「預かる」

 CREA編集部のIです。

 トークイベントのまとめは「アート作品を自分の家に置く醍醐味」についてのお話でした。

 CREA7月号では、橋本麻里さんの企画「古美術の楽しい『使い方』」で、本物の縄文土器に薔薇の花を生けて撮影しています(CREA7月号92ページ掲載)。

「この縄文土器をお借りした、古美術店・祥雲の関美香さんから、『縄文時代って、まだ畳はないじゃないですか。だから洋花でも似合ってしまうんです』と伺って目からウロコ。『……たしかに……!』と(笑)。薔薇や蘭のような洋の花が、不思議なほどぴたりと決まるんです」

 それで黄色い薔薇だったのですね。

 私たちがこの企画を決めるときに少し心配していたことも、橋本さんは話してくれました。

「古い時代の価値あるものに花を生けたりするのは、作品への冒涜なのではないか? という質問をいただくこともあります。
 確かにそういう例がないとは言えないのですが、私個人に関して言えば――同じようにコレクションしている多くの方がそうだと思うのですが――手許にあるものを、自分だけの所有物とは思っていない。もちろん自分のお金を出して買ったものではあるのですが、何千年と生き延びてきたものだから、これから先も、何百年、何千年と生き延びてほしい。
 ほんの数十年の短い時間、大事に預かっているという気分であって、『自分の墓に入れてくれ』とは考えていないんです。
 縄文土器に花を生けるのも、中に落とし(水を溜める容器)を入れているから、作品自体が変化する心配はない。
 改変しない範囲でつきあうのは、許されるのではないかなと思っています」

トークイベントの会場となった青山の根津美術館。現代日本を代表する建築家隈研吾氏による設計です。

 所有するというよりも「預かっている」のだ、というのは、古美術だけでなく、現代アートの分野でも、今回の特集の取材で他のアートコレクターさんたちからよくうかがった言葉です。自分の墓に入れてくれとか自分と一緒に焼いてくれというのは、コレクターとして邪道ということですね!

 次世代につなぐために大切に預かるという範囲内で、アートと楽しく暮らせれば最高ですね。

<次のページ> 大切な預かりものとして扱いながら、一緒に年をとっていく

2014.07.21(月)
撮影=鈴木七絵