今後、日本で承認されてほしいものは…
――近年避妊や月経困難症治療において新たな選択肢が増えていますが、今後、承認・発売されてほしいものはありますか。
これからの希望でいうと、やはり避妊インプラントでしょうか。避妊インプラントは、二の腕の皮下にホルモンを含んだ小さな棒状の器具を挿入することで、高い避妊効果を発揮する避妊方法です。避妊はもちろん、月経困難症や月経過多の改善効果が期待できます。
日本では未承認なので、私のクリニックでは扱っていません。避妊インプラントを海外から並行輸入して扱っているクリニックもいらっしゃいますが、患者さんには自由診療であること、また適用外使用になるため、例えば何か有害事象が起こったときに国からの補償が下りない段階であることは知っておいていただきたいです。
――現状、ピル以外で女性側ができる避妊方法・治療方法としてはミレーナだけになるのでしょうか。
そうですね。ミレーナも昔は「出産された方じゃないと装着が難しい」イメージがありましたが、実は装着される約半分の方が出産を経験していない、もしくは帝王切開しかしたことがない方。痛みはもちろん個人差がありますが、事前に痛み止めを飲んだり、麻酔で耐えられる範囲だったという人がほとんどです。性交渉の経験がない方も入れていらっしゃいますよ。
装着するハードルは前よりも低くなっているので、ぜひ避妊方法、月経困難症などの治療方法の一つとしてミレーナを選択肢に入れていただきたいですが、例えば持病の薬をたくさん飲んでいて、これ以上薬を増やしたくないという方々にとって、ミレーナしか選択肢がないのも課題。だからこそ、避妊インプラントが国内承認されることを期待しています。
――避妊インプラントも含め、新たな選択肢を増やすためには何が必要だと思われますか。
避妊インプラントが将来的に国内で承認される可能性を高めるためには、「避妊や月経のコントロールをするのが当たり前」といった空気を醸成させることが重要だと思っています。そうすればどこかの製薬会社が、日本女性の避妊インプラントのニーズを察知して、「これが承認されたら、自分の会社も最終的に利益になるだろう」と動いてくれるわけですから。
そのためにも、ハードルが高くなりがちな産婦人科へいかにして来院していただくかも重要です。例えばHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは現在小学校6年生~高校1年生であれば公費(無料)で打つことができ、現在対象年齢の7割ぐらいの女性が接種しています。接種の際に小児科もしくは産婦人科に行きますが、そんなときに「今はこういった治療方法で、生理をコントロールできますよ」といった説明を受けることで、産婦人科へシームレスに移行できるのではと考えています。
女性の主体性に関わる話ですから、若いうちに選択肢を知って、薬が合わなければ、他のを試して合うのを探し続けていく。今はピルもそれ以外も様々な選択肢があるので、是非いろいろ試して「使うのが当たり前、コントロールするのが当たり前」な空気を作っていただきたいです。
» 前篇を読む
産婦人科医 宋美玄先生
産婦人科医、医学博士、性科学者。丸の内の森レディースクリニック院長。2児の母。子育てと産婦人科医を両立しながらメディアにも露出し、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場から積極的な啓蒙活動を行っている。
