1999年に低用量ピルが解禁されてから26年。今ではその種類も増え、「月経はコントロールする時代」と言われるようになったけれど、未だに日本では未承認のピルがあることをご存知でしょうか?

 血栓症のリスクが心配でこれまで低用量ピルが飲めなかった人も服用できることなどから、じわじわと普及し始めている「ミニピル」とはどういうものなのか、産婦人科医の八田真理子先生に解説していただきました。

●お話を聞いたのは……

産婦人科医 八田真理子先生

聖順会 ジュノ・ヴェスタ・クリニック八田 理事長・院長。日本産科婦人科学会専門医。実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、地域に根差したクリニックとして思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事している。


低用量ピルとミニピル、何が違う? どう使い分ける?

――低用量ピルの種類も増え、その人の体質やライフスタイルに合うピルを選択できる時代になりつつあると思いますが、最近、見聞きすることの増えた「ミニピル」と低用量ピルでは、何が違うのでしょうか?

八田先生 大きく違うのは、薬剤の中身です。低用量ピルには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つのホルモンが配合されていますが、ミニピルは黄体ホルモン単独剤です。

――ミニピルは、血栓症のリスクが高い人でも飲めると聞きますが、それは、エストロゲンが配合されていない黄体ホルモン単独剤だからですか?

八田先生 その通りです。血栓症というのは、血液が固まって血管を詰まらせてしまう状態を指します。エストロゲンには血液の凝固作用があるので、低用量ピルを服用していない人と比べ、服用している人の血栓症リスクはどうしても高くなってしまいます。そのため、もともと血栓症のリスクが高い<40歳以上、肥満(BMI30以上)、喫煙者、高血圧>の方への低用量ピルの処方は慎重に行う必要があり、処方ができないケースも多くあります。

 その点、ミニピルはエストロゲンを含みませんので、これまでピルを試したくても血栓症のリスクを気にして飲めなかった方でも服用ができます。これが、ミニピルの大きなメリットです。

――ピルを服用することのメリットは、避妊効果によって「産む・産まない」の選択を主体的に行えることと、月経痛やPMS、過多月経の改善など月経にまつわる心身の不快さを軽減してくれることにあると思うのですが、低用量ピルもミニピルも服用することで得られるメリットに違いはないのでしょうか?

八田先生 基本的に、同じだと考えていただいていいと思います。どちらも正しく服用することで高い避妊効果が望めますし、月経困難症、過多月経、月経不順の改善、子宮内膜症の予防効果も期待できます。

 ピルを服用することでホルモンバランスを調整し、脳が「排卵が起きた後の状態ね」とか「赤ちゃんはいないけれど、妊娠と同じ状態ね」と認識して、排卵をお休みします。排卵が起こらないということは、つまり、妊娠もしないということ。そして、排卵の前後で子宮内膜が厚くなることもないので、子宮内膜が剥がれ落ちるときに起こる月経痛が抑えられます。28日を1サイクルとする低用量ピルでは、23~25日あたりに消退出血という少量の出血はあるものの、いつもの月経と比較すれば軽くごく少量になります。

2025.04.18(金)
文=今富夕起
写真=Aflo