好きなものにおいてこだわりが強く発揮される作家・千早茜さんの『しろとくろの偏愛』の刊行を記念して、菓子研究家の福田里香さんとのトークイベントが開催されました。

好きなチョコレートに二人とも興奮してしまうその魅力について語ります。(全2回の2回目/初めから読む)


●ベルナシオンのタブレットを4種類並べて

千早 私の場合、この本は偏愛が詰まりすぎていて、他社の編集さんから「タブレットが地平線って途中から一体何の話? チョコだよね? みたいな気持ちになりました」って言われました。噛んだ時のこのタブレットの景色がいいんですよ。

福田 ベルナシオンの板チョコ、私も好きです。あれはすごくいいものですよね。

千早 去年4種類買えたんです。で、4種類並べて一気に食べたらさすがに動悸がしてきて限界ってあるなと思いました。ベルナシオンの場合は真ん中に包丁を入れ、断面を写真に撮って記録してからかじる。何がすごいってやっぱりナイフを入れた時の感覚。ぶ厚いのにきれいに割れる。断面といえばフランク・ケストナーのタブレットなんですが、1mmに満たない薄い層が何層もあってパ、パリリッと儚く割れていく。それがナイフを通じてなんですが、伝わってくるわけですよ。もうめちゃくちゃ興奮しますね。

福田 食べる前からそれは期待値が上がる! 私もベルナシオンを食べた時にすごいって思いましたが、チョコの中に何か入れるのってそんなに美味しいと思っていなくて、そこにすごい工夫ができるって思ってなかったんですね。だけど、あんなことこんなことができるんだ、とショックを受けたというか。

千早 フランク・ケストナーを差し上げたい。ちょっとびっくりします。ケーキでも、本当に上手なケーキはナイフがスッと一切の抵抗なく下まで行くんですよね。下手なのは途中で引っかかり、グニッとクリームやムースがもれでてしまう。中央に硬いものを入れない。入れたとしても、ものすごく薄くするとか、建築物のように素材の強度や重量を考えてないとナイフがスッと下まで行かないんですよ。切る瞬間にパティシエの腕がわかって、うわーっとなるんですよね。横から断面を見て食べるんですけど、知り合いのパティシエに「横から見てるやつはだいたい変態」って言われて。

福田 フォーク入れた時、断面でハアアってなりますよね。

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