●シングルオリジンのチョコレートの秘密
福田 今、カカオの高騰でカカオを使ってないチョコレートもあるじゃないですか。食べたことあります?
千早 ありますね。今、みなさん研究してますよね。でも本当にこれは声を大にして言いたいんですけど、チョコレートの代用品はありません。あのカカオの特別な香りとか、やっぱり無理だと思います。
福田 シングルオリジンとか食べます? シングルオリジンは、NYのマストブラザーズとかが走りかな。2006年あたりから登場した新概念の板チョコですね。
千早 食べます。
福田 欧米の人たちの間では、成功者がやりたいセカンドキャリア的な職業というのがあって。アメリカだったらヨーロッパへの憧れからのワイナリー、あと素敵な牧場とか、ドリームビジネスと称されています。
千早 わかります、その気持ちは。
福田 それがチョコレートを細かくする撹拌機が小型化されてsmall batch(小ロット生産)で作れるようになった時に、若い成功者たちがこぞって作り出したのがbean to barを標榜するタブレット。何かの勃興の陰には必ず機械の進化があるというか。
千早 それはシングルオリジンなんですか。
福田 それが多いと思います。いいカカオ豆を手に入れるルートがあり、なめらかにコンチングできて固める、そしてパッケージを素敵にすると、極端に言えば、自分の中に味に対する確たるテイストがあれば、製菓修業をしていない人でも板チョコは作れるようになりました。フランスではショコラティエとパティシエは別の免許。それくらい学ぶ調理が違うので両方取得してチョコレート菓子を作る職人の技は凄まじいんですが、それとは別の概念の流行。良い悪いではなく、面白いことになったなと思って見ていました。
千早 え、テンパリングとかできるんですか。
福田 できると思いますよ。自分で学んでもいいし、経営に徹して誰かショコラティエを雇えばいいですし。
千早 今、すごい腑に落ちました。私はちゃんと修業を積んだショコラティエたちが、いろんな地域のカカオを組み合わせて、これがうちのベストだよ、って提供してくれるチョコが好きなんです。産地から買ってコーヒーや紅茶みたいに楽しむのもいいけど、お菓子の楽しみって、誰かの経験や感性を凝縮させた結果を食べたいっていう気持ちが強い。だからチョコのシングルオリジンにそんなに萌えないんだなと気づきました。
