お菓子は空間をあたためるインテリア――ひと手間かければ十分

 北欧の人たちは、男女を問わず甘いものが好きです。どの国を訪れても、「お茶の時間」に注がれる情熱には目を見張るものがあります。温かいコーヒーや紅茶を淹れ、ケーキやクッキーを用意し、キャンドルに火を灯す。ただそれだけで、日常が特別な時間へと変わります。

 “ヒュッゲ”、“フィーカ”という言葉は、まさにそんな時間を表した言葉。デンマークのヒュッゲは、心地よさやあたたかさといった状態を、スウェーデンのフィーカは、立ち止まって時間を楽しむことを言います。そしてフィンランドでは、“カハヴィタウコ”という言葉があり、これはコーヒータイムとして大切にされる時間だそうです。

 友人のピーターを訪ねてストックホルムに行ったとき、夕ごはんをつくってくれたうえに、デザートにレイヤーケーキ(ショートケーキ)を用意していたのには驚きました。「手づくりなんてすごい!」と言うと、彼はあっさり、「スライス済みのスポンジにベリーを挟んで、クリームをかけただけだよ」と言います。当時、私はお菓子のレシピ本をつくっていて、「お菓子は全部ゼロから」と思い込んでいた頃。だからこそ、そのひと言は衝撃でした。

 日本では、手づくりのお菓子には緊張感が伴います。材料選びからデコレーションまで、完璧でなければいけないような気がします。北欧では違います。お菓子の役割は「時間を分かち合うこと」。きちんとしている必要は、ないのです。

 ちょっと手をかけるだけでいい。パウンドケーキに生クリームを添えただけでも、ヒュッゲでフィーカ、カハヴィタウコにふさわしいお菓子になります。

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行正り香(ゆきまさ・りか)

料理家・インテリアデザイナー。福岡県出身。UCバークレー卒業。デンマーク親善大使に選ばれる(2017年)など、北欧のインテリアに造詣が深い。インテリアコーディネーター、リフォームプランナーとして多くの家作りにも携わる。30冊を超える料理レシピ本のほか、『行正り香のインテリア』『行正り香の家作り』『人生をえるリノベーション』もロングセラーとなっている。探究学習・英語スピーキング教材「なるほど!エージェント」の開発も手掛ける。2023年、東京国立博物館のアンバダーに就任。館内のレストラン・カフェの照明のディレクションもサポート。二人の娘と夫の4人家族。
https://yukimasarika-living.com/
Instagram:@rikayukimasa

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