「昭和のお風呂にローマ人が飛び出してくる」アイデアの誕生

 ある日、家でアイロンをかけていたら、急に昭和のお風呂にローマ人が飛び出してくるというイメージがひらめきました。それを絵に描いてみたら、非常にばかばかしい絵になって、アホらしくて、おかしくて一人で大笑いしたんです。日本の友人にファクスで送ったら、「マリ、アタマ大丈夫?」と言われたのですが、もしかしたらおもしろい漫画になるかもしれないとプロットとネームを一つ描いてみたんです。友人に見せたあと、大手出版社の青年誌編集者を紹介してもらい、持ち込みました。その人は「自分はおもしろいと思うけど、世間的にはどうかなあ、ちょっとニッチなテーマだからなあ、うーん」とうなっていました。

 次に、それほど発行部数は多くないけれど、エキセントリックな力を持った作家が集まっている編集部に持ち込んだら、一発OK。「あなたのメンタリティちょっとおかしいですよ」などと言われたけれど、これはすぐに掲載しましょうという流れになったのです。

 私は漫画で大成したいとか、有名になりたいとか、成功したいという思いは一つもありませんでした。油絵も断念しましたし、絵で結果を出したいという気持ちは皆無でした。だけど、せっかく留学までしたわけですし、どんな些細(ささい)なものでもいいから、絵を描くという仕事は何がしか続けていきたい、という願望はありました。なので、そこで掲載してくれると言われたときは、「やった! 万歳!」と思いましたね。

※1 カイロ大学  1908年に創設されたエジプトのギーザにある総合大学。古代エジプト研究の中心的存在で、考古学研究には世界中から留学生が集まる。

※2 大航海時代 15世紀から17世紀前半にかけて、ポルトガル、スペインを中心とするヨーロッ パ諸国が新航路を開拓し、アフリカ、アジア、アメリカ大陸へ進出。植民地を広げていった 時代。

ヤマザキマリ

漫画家・文筆家・画家。日本女子大学 国際文化学部国際文化学科 特別招聘教授、東京造形大学客員教授。1984年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。2010年『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞2010受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受賞。2024年『プリニウス』(とり・みきと共著)で第28回手塚治虫文化賞のマンガ大賞受賞。著書に『ヴィオラ母さん』『ムスコ物語』『歩きながら考える』『扉の向う側』『貧乏ピッツァ』など。現在、『続テルマエ・ロマエ』を集英社「少年ジャンプ+」で連載中。

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