「楽しい楽しい」と言い続けていると本当に楽しくなってくる

――『シッダールタ』の舞台は古代インドですが、草彅さんはインドにいらしたことはあるのですか?

 ないんですよ。でも、興味はあります。ガンジス川とか行ってみたい。インドを旅したら、気に入って帰ってこなくなる人がいると聞きますよね? 僕もハマって帰ってこなくなるかもしれない(笑)。

――(笑)。草彅さんはいつも明るく楽しい空気を放っておられます。なぜ、そんなにポジティブでいられるのですか?

 もともとうちの母親がそういうタイプなんです。あとは、いくら悩んでも、大変なことが起きたとしても、時間は自分とは関係なく進んでいきますよね? だから、ネガティブな思いをずっと抱えているのは損じゃないかなと思うんです。

 やけっぱちでもいいからポジティブなことを言ってみるんです。言霊ってあると思うから。たとえば朝起きた時に「最高!」と言ってみるんです。「最高!」「面白い!」と。何の根拠もなくても、そういう言葉を口にしていると、だんだんそういう空気が生まれてきます。

 誰かが言っていたけれど、「成功するから楽しいんじゃなくて、楽しいから成功に向かっていく」のだと思います。「大変、どうしよう」と煮詰めて考えてもいい方向にはいかない。でも、「楽しい楽しい」と言い続けていると雪だるまのように本当に楽しくなってくるので。もちろん、それでも失敗することはありますよ。でも、一生懸命やったのなら構わないと思います。失敗の中から何かを拾えればいいわけだから。

――この取材の場も草彅さんのおかげで楽しい気持ちでいっぱいになりました! 舞台『シッダールタ』も大成功しますね。

 僕の持っているもの全てをこの作品にかけますので、観ていただかないと大損しますよ!(笑) チケットを握りしめて、観に来ていただきたいです。

草彅剛(くさなぎ・つよし)

1974 年7月9日生まれ、埼玉県出身。1991年、CDデビュー。 近年の出演作に、第48回日本アカデミー賞 優秀主演男優賞を受賞した映画『碁盤斬り』(24)、第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などを受賞した『ミッドナイトスワン』(20)、舞台『家族のはなし PART1』(19)、音楽劇『アルトゥロ・ウイの興隆』(20)、『シラの恋文』(23)、『ヴェニスの商人』(24)ドラマ「罠の戦争」(23)、NHK 連続テレビ小説「ブギウギ」(23)、ドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(23)、NHK 大河ドラマ「青天を衝け」など。主演ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに」が放送中。

舞台『シッダールタ』

ひとりの男(草彅剛)が、世界の混沌の中で自身を見失い佇んでいる。友人のデーミアン(鈴木仁)は行動を促すが、彼は歩き出す道を見出せない。同僚のエヴァ(瀧内公美)の支えを受けながら思索の森に足を踏み入れ、やがて彼はシッダールタとなる。 古代インドに生まれたシッダールタ(草彅剛)は、最高位のバラモン階級の子として生きている。その生活に疑問を抱き、より深い叡智を求めて、家を飛び出す。シッダールタについてきたのは、彼に魅了されている青年ゴーヴィンダ(杉野遥亮)ただひとりだった。 しかしシッダールタは、修行の意味に疑問を抱き、修行の道を突き進むゴーヴィンダとも袂を分かち、俗世に下野する。やがてシッダールタは、美貌と知性と教養で確固たる地位を築いた高級娼婦・カマラー(瀧内公美)と出会い、性愛による快楽を体験する。さらには商売で富を得ることで、所有欲を満たす経験を覚えるが、それでも本質が満たされることはなく苦悩する。やがて彼は川で渡し守のヴァズデーヴァ(ノゾエ征爾)と出会い、彼の世界観に導かれていく。川の流れの中、シッダールタは別れたカマラー、自らの息子(中沢元紀)、かつて袂を分かったゴーヴィンダらと再会を果たし、自らにさらに深く問いかける。 出会いと別れを繰り返し、この世界に絶望し、人生に迷っていたシッダールタが、悟りの境地にたどり着いた時に見えた景色とは―。その音とは―。

【東京公演】2025年11月15日(土)~12月27日(土) @世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】2026年1月10日(土)~1月18日(日) @兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

衣装クレジット

サファリジャケット、シャツ、パンツ、 ネクタイ、 シューズベルト/すべてポール・スチュアート