そんな注意書きってある? どういうこと? 思わず興味を惹かれる、秀逸なタイトルのエッセイ集だ。著者は2023年に『これが生活なのかしらん』(大和書房)で商業出版デビューした、新進気鋭の作家だ。

 デビューのきっかけとなったのが、2022年3月に個人で自費出版した本書の「私家版」。高校卒業後、八王子の実家を出て都内で美容師として働き始めてからの悲喜こもごもを、フラットな視点でさらりと綴る。その内容が、都内の独立系書店での店頭販売を中心に大きな反響を呼ぶ。まだあまり名が知られていない新人の書き手の自費出版本としては異例の1万部を超すヒット作になった。

「私が私家版の存在を知ったのは2022年の7月頃でした。信頼している本の目利きである、愛媛の独立系書店『本の轍』の店主・越智政尚さんが紹介していたのがきっかけです。手にとって、10代後半から20代にかけて、がむしゃらに突き進んでいた頃の記憶が鮮明によみがえる筆致に衝撃を受けました。著者はとりとめのない、日々のささやかな喜びや痛みをとても巧みに掬い上げます。これは毎日の生活をなおざりにしないためのお守りになるような本だと感じて、商業出版を提案しました」(担当編集者の齋藤由梨亜さん)

 インパクトのある書名は私家版のタイトルをそのまま引き継ぎ、装画と挿絵も私家版と同じイラストレーターに依頼。随所で私家版が持っていた魅力をしっかりと残すことを意識しながらも、私家版の出版後に商業媒体をはじめイベント展示用に書かれた原稿や書き下ろしなど17篇を新たに追加。判型も文庫サイズからソフトカバーの四六判に。新規層に訴えかけると同時に、既存の読者にも満足してもらえるようなプラスアルファの要素を盛り込むことを心がけた。

 1996年生まれの著者と同世代の読者からの共感の声はもちろん、高齢の読者にも響いているそうだ。

「60代くらいの方に感想をお聞きする機会があったのですが、『自分の若い頃と重なって懐かしい。さまざまな感情を思い出した』とおっしゃっていたんです。著者の文章には、時代や世代を超えた共感だけでなく、何気ない日々に光を灯してくれる力があり、それこそが本書の大きな魅力だと感じています」(齋藤さん)

2024年11月発売。初版7000部。現在8刷4万3000部(電子含む)

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定価 1,760円(税込)
実業之日本社
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2025.09.26(金)
文=前田 久