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閉経が一つの節目となり、変化した価値観

 今振り返れば、友だちこそが人生の財産だと気づいたのは、まさに閉経を迎えた頃た。 それは良くも悪くも、閉経が一つの節目となって価値観が変わったことを示している。

 49歳で、大きな不幸感を感じた時、いろんな不安が渦巻くとともに、先が見えてきたという感慨もあった。一方でいろんな欲もおさまってきて、これからの人生で一番大切なものはなんだろうと考えた時、それは紛れもなく人であり、友であるという答えが見えてきた。

 なぜなら極端な話、仮にこれからいくら財産を増やしたとしても、一体どうやって使うのか? 時間がたっぷりできたとしても、一体どうやって過ごすのか? お金も時間も友だちがいなかったら、怖いくらい虚しいものとなり、終わりのない孤独を感じるのだろうから。

 そこに夫がいようといまいと、それは別の話。友人とでないと、性別を問わない友だちでないと、成立しないおしゃべりはあって、それがこれからの人生の彩りになると感じてきたからなのだ。

人間だけに許された会話の喜び、それこそが人生

 その時、これまでの体験の全て、これまで得てきた知識の全てを使って尽きない会話をし続ける、それも含めて人生最大の財産なのではないかと思ったのだ。

 それこそが、人生に奥行きと深い味わいをもたらしてくれる最良の時間なのだという確信を持っているからこそ、その時に向けて今まで経験と知識を積みあげてきたのだと言ってもいい。

 人間だけに許された会話の喜び、それこそが人生。そうした一生の財産を、生涯大切にしていきたいと今改めて強く思っている。

齋藤 薫(さいとう・かおる)

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『“一生美人”力』(朝日新聞出版)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数。近著に『年齢革命 閉経からが人生だ!』(文藝春秋)がある。

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2025.09.11(木)
文=齋藤 薫
写真=平松市聖