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「恋人」と「友だち」の定義の違い

 それも、10代の頃のあるトラウマが関係していた。何をするにでも一緒だった数人の仲良しグループが、ちょっとした出来事をきっかけに、完全に崩壊したことがある。非常に傷つき、心が折れた。子ども心に親友を失うことの強い喪失感に襲われ、大げさではなく人生における取り返しのつかない損失をしたような気になった。

 もうこういう思いは嫌だと思ったからこそ、友だちと関係が終わってしまう事態をどうしても避けたい、そう思うようになったのだ。

 恋人という存在は、くっついたり離れたり、別れも一つの宿命だけれど、友だちとは別れないもの……自分の中でそう定義付けるようになっていた。

藤原美智子さんと交わした「今はこれでいいよね」

 一生ものとは、一生別れない、一生疎遠にならないということである。だから、途中で疎遠になりそうな人とは最初から付き合うべきではないと考えた。でも逆に、その分選り抜き。一人一人、本当に信頼できる人。

 その信頼関係を物語るのが、今回対談をさせていただいた藤原美智子さんと、かつてこんな会話をしたこと。

「今はお互い忙しいからあんまり会わないけど、いつかもっと時間ができた時に、いっぱい会うことがわかっているから、今はこれでいいよね」

 そんなことを言い合った記憶がある。

 思えば、他の友だちとも、まさにそういう付き合い方をしてきた。お互い忙しい時はごくたまに、1年に1回ということもあったけれど、いつか時間ができたらもっともっと会うということがわかっていたから、今はそれでいいと思った。もっと会いたいけれど楽しみは後に残しておこうと思えるような関係を紡いできたのだ。

 そして今、いよいよそういう時期を迎えつつあることを感じている。学生時代の友だちとも、最近はまたよく会うようになっている。なんだか昔に戻ったみたい、そう言いながら。まさに予定通り。それが一生ものの付き合い方なのだ。

2025.09.11(木)
文=齋藤 薫
写真=平松市聖