展名「何者かへの道」に込めた意味とは
第二会場は、天井高い大空間のそこかしこに絵画や彫刻が配置された「空間に描く」。加藤は絵画を創作の中心に置きつつ、2000年代から彫刻もつくり続けてきた。
立体作品は木材をはじめ石、ソフトビニール、布地、プラモデルなどさまざまな素材を用いてつくられるが、扱うモチーフはやはり「人がた」である。

空間構成は、加藤がみずから現場に立ち、直観に従い決めていった。そのさまは空間に絵を描くがごとし。その結果、室内のどこに立っても見応えある眺めが実現している。
第三会場は「小さな歴史」と名づけられ、小さめの作品が一望できるよう集められた。企業とのコラボレーションなどによるプロダクトが多数並んでいたり、加藤がドラムを担当しているふたつのバンド「HAKAIDERS」「THE TETORAPOTZ」の演奏映像なども見られる。
音楽は加藤泉にとって、表現活動の重要な一面となっており、会期中にふたつのバンドのライブも、美術館内や近隣のライブハウスで開催される予定だ。

今展の「何者かへの道」というタイトルは、はたして自分が何者かという問い、そもそも人間とは何者かという問い、そして「人がた」とは何かという問いをすべて含めて、加藤が名づけたものだ。
これらの問いを頭に留めながら広大な会場をひとめぐりすれば、自分自身や人という存在がどこから来てどこへ行くのか、おぼろげながら理解できる気がしてくる。
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加藤泉 何者かへの道 IZUMI KATO: ROAD TO SOMEBODY
7月5日〜9月1日
島根県立石見美術館
https://www.grandtoit.jp/museum

2025.08.02(土)
文=山内宏泰